漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、綾野剛主演の「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ系 日曜22:30~)を批評する。
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120年前、医学博士である父親がよみがえらせた命。不老不死になった彼(綾野剛)は、「怪物」なのか。偶然出会った女子大生・津軽継実(つぐみ=二階堂ふみ)に恋をした怪物。継実は彼に、深志研という名前を与える。
タイトルは「フランケンシュタイン」、話はだいたい映画「シザーハンズ」、時々音楽が「オペラ座の怪人」そっくりという、よりどりみどりの怪物(怪人)祭りなんである。そんな中、このドラマの圧倒的オリジナル要素はキノコだ。
「シザーハンズ」のエドワードの手がハサミなら、研の体は何かっつーとキノコや胞子(菌?)を放出。シメジを食べれば、翌朝、布団にびっしりシメジが生えている。ギャーッ! ネバネバ納豆を食べると、なぜか翌朝ナメコがびっしりって、ひとりキノコ農家か。
感情が高ぶると、光る胞子のようなものを発し、触れた人間を傷つけたりもする。そもそも、父・研太郎(斎藤工)が探し出した、死んだ細胞をよみがえらせる菌と、雷によって命を得た研。全身キノコ(?)のわりに、1話の風呂シーンで脱いだ時、「北斗の拳」のケンシロウばりなバッキバキの肉体だったから、びっくり仰天だ。ちなみに全裸を目撃した継実は、真っ赤になって「ますます人間にしか思えないよぉ」って、これいったい何キノコなの、教えてお父さん。
怪物と女子大生の恋。しかし継実(死と隣り合わせの難病を患っている設定)は、「恋なんてできません」と拒絶する。そのくせ「私はあなたのファンです」なんて、研の心をかき乱す。思わず彼女を抱きしめた後、「なんですか? この感情は」と尋ねる研。しれっと「欲望ですかね」と答える継実。「なんですか、それは?」。重ねて聞けば、彼女は研の肩に頭をこてんと置き、「こういうことです」と微笑むのだ。いるいる。大学のサークルとかに絶対一人はいる、こういう女子。一見おとなしげで、森で花をつんでるような顔しながら、モヤ~ッと女子力菌を放出して怪物(童貞)の心を翻弄しまくる菌類女子。キノコと菌類女子、相性ぴったりだよ!
このドラマは、怪物を描きながら、むしろ周囲の人間の中にある怪物性を浮き彫りにしている。でも、そんなことよりキノコと菌類女子の恋が成就したら、どんな新種が発生するのか、もう頭の中がキノコでいっぱい。
※週刊朝日 2017年6月23日号