著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、はアーティスト・未唯mieさんの瓢亭「夕霧そば(温)」だ。
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このお店を知ったのは30代後半のころだったと思います。ツアーで全国あちこちへ行くものの、駅とホールとホテルを行き来するばかり。おいしいものになかなか出合えない、とこぼす私に、大阪出身の友人がすすめてくれました。
初めていただいたときの衝撃は今でも忘れられません。ざる蕎麦なのに、お汁もお蕎麦も温かいっていうのが珍しい。それに何と言っても、運ばれてきた瞬間の香りがすばらしかったんですよ! 麺に練りこまれた柚子の香りが、湯気と共にふわーっと。私、三つ葉や山椒、パクチーなど、香りの強いものが大好きで。すぐにとりこになりました。お蕎麦のおいしさはもちろん、生卵を溶き入れたお汁のまろやかさも実に絶妙です。
ここの女将さんのことは「大阪のお母さん」って呼ぶほど、親しくさせていただいています。今も大阪に行ったら、外せないお店。帰る寸前に慌ただしく寄って、ぎりぎりに新幹線に飛び乗る……。それぐらい、私には特別なお蕎麦なんです。
「瓢亭」大阪市北区曽根崎2-2-7/営業時間:11:00~23:00(土~22:30)/定休日:日祝
※週刊朝日 2017年6月23日号