ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。今回はヤフー・ニュースにあるコメント欄について取り上げる。

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 4月28日、ネットの言説を巡る興味深いリポートが公表された。ネットワーク社会論を専門とする立教大学の木村忠正教授とヤフー・ニュースが、同サイトのニュース記事に設けられている「コメント欄」について詳細な分析を行い、その結果を朝日新聞が報じたのだ。

 コメントで出現頻度が高かった単語の1位は「日本」。次いで「韓国」「中国」となった。その他上位のキーワードにも「戦争」「朝鮮」「慰安」「反日」「在日」といった単語が並び、歴史認識や民族、領土、ナショナリズムなどの問題への関心の高さをうかがわせた。特に、韓国に関連した単語を含むコメントは全体の20%に達し、中国関連まで合わせれば全体の25%。それらのコメントの多数が“嫌韓”や“嫌中”意識の強いものだったという。ヤフー・ニュースのコメント欄は、韓国や中国、あるいは在日コリアンの人たちに対する排斥意識が顕著に見られる場所ということがデータで証明された格好だ。

 国内大手新聞社からネットメディアまで、様々な媒体のニュースを再配信するヤフー・ニュースの月間ページビュー(PV)は、2016年8月に月間150億PVを記録。押しも押されもせぬ“日本最大のニュース媒体”である。それだけ影響力の強いニュース媒体のコメント欄に排斥意識の強いコメントがあふれているのだ。本来コメント欄というのは、ユーザー同士の情報交換や議論を行うために設けられているものだが、同サイトのコメント欄はお世辞にも建設的な議論の場になっているとは言いがたい。

 
 07年のコメント欄設置以来、ヤフー・ニュースのコメント欄が見るに堪えないものになっているという指摘は各方面からなされてきた。運営するヤフー・ジャパンは15年9月に同サイトのスタッフブログでコメント欄を設けた理由を「ニュースを『見て終わり』ではなく、出会ったニュースに関する多様な価値観・解釈を共有しあうことで、ユーザーが考えを変えたり、共感したり、意見を述べたりといった、何らかのアクションを起こすきっかけを提供したい」と説明している。

 ヘイトスピーチについても適宜削除やアカウント停止などの対応を行っているということだが、今回の調査や普段のニュースコメントを見る限り対応が追いついていないことは明白だ。

 改めてヤフー・ニュースのコメント欄の問題について整理する。一つは本来コメント欄を設けていない媒体の記事であってもコメント欄を付けていること。もう一つは、そのコメントの多くが民族差別などに基づいた排斥意識の強いものであること。最後の一つはその状況を長年放置してきたということだ。コメント欄のPVはヤフー・ニュース全体の13%を占めるという。このまま放置を続けるようなら、アクセス数(広告売り上げ)目当てでヘイトスピーチを放置していると言われるのもやむを得まい。今回の調査をきっかけとして、コメント欄廃止も含めた抜本的対策を講じるべきだ。

週刊朝日  2017年5月26日号