生活スタイルに合わせて、夜間や宿泊型も広がっている(※写真はイメージ)
生活スタイルに合わせて、夜間や宿泊型も広がっている(※写真はイメージ)
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 腎不全で失われた腎臓の働きを代替する人工透析。大半の患者が利用する血液透析では、生活スタイルに合わせて、夜間や宿泊型が広がっている。もう一方の腹膜透析も機器が便利になり、患者の負担が大きく減っている。

 平日の夕方6時すぎ、JR日暮里駅前にある東京ネクスト内科・透析クリニック。仕事を終えたスーツ姿のサラリーマンが続々と来院する。ロッカーでパジャマに着替え、透析室のベッドやリクライニングチェアに横になりながら、4時間の血液透析を受ける。

「腎不全は60歳前後で発症するケースが多いのですが、働き盛りの40~50代でなる人も少なくありません。昼間に4時間の透析は難しいので、仕事後に受けられるよう夜間透析を実施しています」(同クリニック院長・陣内彦博医師)

 腰の付近に左右一つずつある腎臓は、主に体内の老廃物(尿毒素)や過剰な水分を排出するため、尿を生成する働きを担っている。しかし、糖尿病や高血圧などから慢性腎臓病(CKD)になると、尿毒素や水分が血中に蓄積し、さらに進行すると腎不全になる。

 腎不全の患者は血液を浄化する人工透析療法か、腎移植が必要で、現在は約32万人が人工透析を受けている。人工透析には血液透析と腹膜透析がある。

 大半の患者が選択する血液透析は、はじめに腕の動脈と静脈をつなぐシャントという手術をおこなう。次に、つなぎ合わせた血管に注射針をさし、ここから取り出した血液を「ダイアライザー」という透析機器に循環させる。尿毒素や余分な水分をろ過したうえで、患者の体内に戻す。

 透析は基本的に1回4時間、週3回実施する。ただし、効果の薄い人には6時間以上の長時間透析をおこなう場合がある。

「長時間透析は、体内の尿毒素が多い人に向いています。時間をかければその分、尿毒素が多く排出されるからです。しかもゆっくり排出されるので、からだへの負担も軽減されます」(同)

 血液透析にはさらに時間をかけた、宿泊型の「オーバーナイト透析」もある。終夜の医療スタッフの確保などの課題があり、実施できる施設は限られるが、首都圏を中心に全国30ほどで実施している。同クリニックでは、毎週金曜日の夜11時から翌朝の7時までの8時間おこなっている。

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