──現在を生きる我々も、気持ちの上で闘わざるを得ないことがありますが、闘いの場面ではそういうご自分の思いと重ねたり?
そこまで闘っている意識、ないですから(笑)。
──俳優さんによっては役が抜けず、日常生活でも役っぽくなるという方もいますが、木村さんは?
そういえばこの映画の撮影中、長年番組のスタッフをやってくださっていた方に、「なんか最近、怖いんだけど」と言われましたね。自分ではまったく意識していないので、わからないんですけど。
──木村さんと三池監督とのタッグということで注目が集まっていますが、主演としてのプレッシャーを感じることは?
プレッシャーはぶら下げていてもなんの得にもならないし、もしぶら下がったままどうしても離れないとしたら、それを武器にするしかないですよね。
──今回はどうでした?
ちょうど撮影に関係のないことでゴタゴタしていた時期でもあったので、まったく必要のない、変なプレッシャーはありました。だからこの撮影があったことで、現場で思い切り爆発させてもらえたのはよかったですね。
──撮影は2015年11月から16年1月、真冬の京都と聞きました。衣装は着流し、素足に履物のスタイルですから、寒くて過酷だったのでは。
過酷とは思わないし、「寒い」というのは、作品に必要のない要素ですから。たとえば斜光や逆光の場合、各出演者のところに氷を入れた紙コップが回ってくるんです。それを口に含ませて、息が白くならないようにする。みんなそうで、俺だけじゃないですからね。たとえキツイことであっても、思い返してみると言葉が全部変換されてるんです。「楽しかった」「充実してた」と。
──その原動力になるものは?
現場が自分を必要としてくれること、そして作ったものを吟味してくれる人たちがいてくれることかな。
──ゼロ号試写を見終わったとき、立ち上がって三池監督と握手を交わしたと聞きました。
自分が現場で感じた不安や悔しさ、負担がキレイに消えたゼロ号でした。「本当にありがとうございました」という思いでした。フィジカルな面で100%で臨めなかったところもあったので。