終わらない仕事は、アウトソーシングにすればひとまず解決かと言うと、そうでもない。連合東京の古山氏はこう言う。

「本人が好きでやっている仕事であれば、部分的にアウトソーシングをすることでモチベーションが下がってしまいます。仕事というのは、楽しければ長く働いても疲れません。楽しく仕事をしている人間にとって、『帰れ』と言われるのはつらいものです。また、本人にしかできない仕事もあり、物理的にアウトソーシングが不可能という場合もあります」

確かに、自分に任されたプロジェクトは最後まで責任を持ってまっとうしたいと思う人が多いだろう。そういう仕事の「やりがい」の面を無視するのも、ジタハラの一種と言えそうだ。

 前出のTさんが言う。

「切りの良いところまで仕事ができないのは非効率的と感じます。提案書を書いている途中で時間切れになると、翌日、また一から考え直さなければならない。かえって時間がかかってしまいます」

 メディア、広告会社などクリエーティブな要素のある仕事は、単純に時間で区切ることができない。

「突然、22時消灯に踏み切った電通の現場は、おそらく今パニック状態に陥っているのではないでしょうか」(横山氏)

 古山氏もこう指摘する。

「かつては、企業によって研究職の人を自由に遊ばせておくという風土がありました。そうすると、画期的なアイデアが生まれることがある。世紀の発見とか大ヒット商品の発明などといったものは、時間に縛られていては生まれません。こういう仕事は、賃金体系から見直す必要があります」

 一方で、労働時間の長さでしか成果を測れない仕事もある。

「店舗スタッフや事務作業員、物流スタッフなどは、働いた時間の分だけ加算されるという考え方の仕事です。そういう仕事をする人たちは、残業代で収入を保っている面があるので、残業削減などしてほしくない。これが時短が進まない大きな理由のひとつです」(横山氏)

 長時間労働は、賃金体系の差や個々人の意識の差などが複雑に絡んだ根深い問題なのだ。時短を進めるにしても、すべての従業員に一律に適用するのではなく、個々の仕事内容や状況に合わせて斟酌するのが理想と言える。(ライター・伊藤あゆみ)

週刊朝日 2017年4月14日号より抜粋

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