今回の働き方改革で政府は労使協定により残業は月60時間までを上限としているが、経団連は繁忙期のみ月100時間上限を認めるよう主張。
3月28日の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)では、残業規制は繁忙期の上限を「2~6カ月平均でいずれも月80時間」とすることなどを定めた。このような状況で、時短に踏み切る企業が増えているのは、連合にとって良いニュースと思えるが? 連合東京の組織化担当・古山修氏に聞いた。
「今盛んに行われている時短は、一見、悪しき慣習を是正する動きのように見えますが、そうとは限りません。労働基準監督署がうるさいから、あるいは企業イメージが良くないから、見せかけとして残業を減らしているだけという企業も多い。単に残業を削減するだけでは、本当に長時間労働を是正することにはつながりません」
時短にするだけで人員を増やさなければ、仕事はたまる一方だ。となると、従業員は仕事をこっそり家に持ち帰り「隠れ残業」をするか、早朝勤務をするしかない。それでは長時間労働が是正されたとは言えないし、隠れ残業は情報流出のリスクが大きい。そのリスクを避けるために、企業はアウトソーシングを増やすことが予想される。
「下請け業者に外注するのであれば、時間外労働も何も関係なく、いくらでも働かせられます。企業側が従業員にやみくもに『帰れ、帰れ』と言うのは、アウトソーシングを増やし、最終的には雇用関係をなくすためではないか、と私には思われてなりません。『働き方改革』という名のもとに、正社員を減らす政策と結局は同じです」(古山氏)
安倍政権の働き方改革は、「副業などダブルワークを良しとすることで正社員を減らす政策」だと古山氏。
正規雇用を減らす代わりに非正規雇用や個人事業主が増えるが、彼らの立場では交渉力が弱く、長時間労働を押しつけられかねない。結局、「長時間労働の温床になる」と警鐘を鳴らしているのだ。