「脳卒中の専門医がいる病院は限られます。Joinなら、専門医がその場にいなくても診断などが可能になります。専門医からすれば、たとえ自宅にいても、診断をはじめ地域の医師や若手医師へのアドバイスなどを送れるようになります」(高尾医師)

 連絡を受けた同院では、「了解、対応可能です」と即答、患者を受け入れた。

 Joinで連携していれば、他の病院が見つかりやすく、送り届けるまでの時間を短縮しやすい。さらに、通常、移った先の病院で改めてMRIなどの画像検査をおこなうが、この場合、Joinで画像を確認できているためその必要はない。同院でも、すぐに血栓回収のための治療に入ることができた。

 杉浦さんの場合、発症から約3時間後には血流を再開通でき、その約1時間後、元の病院へ「無事、血栓を回収しました」との返事が送られた。これらの病院間のやりとりのデータは保存され、治療の検証などに役立てられる。

 杉浦さんはややまひが残ったが、通常の生活が可能になり、転院してリハビリを始めた。「寝たきり」の文字が頭をかすめたという杉浦さんは、自力で生活できることのありがたさをかみしめている。

 Joinは現在、米国やドイツなどでも使われ、日本を含む6カ国の150以上の施設で使用されているとみられている。

 同院がJoin導入前後の1年間の脳卒中治療を比較したところ、診断までの時間は40分削減され、医療費は8%削減、入院日数も15%短縮したことがわかった。

 高尾医師は治療までの時間短縮にとどまらず、さらに未来を見据えて言う。

「健診結果など患者さんの医療情報を患者さん自身がスマホで持ち歩き、Joinを組み合わせることができれば、全国どこにいてもすぐに治療が始められます。患者さんにも医療者にも、そして国としても大きなメリットが得られることでしょう」

週刊朝日 2017年4月7日号より抜粋

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