Joinは現在、米国やドイツなどでも使われ、日本を含む6カ国の150以上の施設で使用されているとみられている (※写真はイメージ)
Joinは現在、米国やドイツなどでも使われ、日本を含む6カ国の150以上の施設で使用されているとみられている (※写真はイメージ)
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 日本で寝たきりになる原因の1位である脳卒中は、大きく脳出血、くも膜下出血、脳梗塞に分けることができる。そのなかでも7割を占めるのが、脳血管が詰まる脳梗塞で、治療は時間との勝負になる。

 脳梗塞の発症から治療開始までの時間を短縮するには、どうしたらいいのか。東京慈恵会医科大学病院脳神経外科の高尾洋之医師は、

「検査の回数を減らし、患者を送り届ける時間を短縮すること」と言い切る。これを高尾医師は、自らが開発に協力した医療者間コミュニケーションアプリ「Join」で実現した。MRIなどの検査画像や治療中の映像などを、医師間で、リアルタイムでも共有できるスマートフォン用アプリだ。

「LINE(無料通信・通話アプリ)の部屋ごとに各病院とつながっていて、CT(コンピューター断層撮影)やMRI画像が送られてくるイメージです」(高尾医師)

 Joinは16年4月、汎用画像診断装置用プログラムとして健康保険の適用となった。ソフトウェアへの初の保険適用である。

 Joinの利用そのものに保険点数(医療費)がつくわけではなく、Joinを導入した病院の医療費請求の要件が緩和された。例えば「専門医ではなくても研修医がいればよい」「画像診断は、自宅など医療機関以外の場所の読影でよい」などとなり、患者にとって脳卒中治療の間口が広がることになる。

 東京都在住の無職・杉浦要さん(仮名・83歳)は16年10月、妻と散歩中に突然手荷物を落とし、さらにふらつき始め、そのまま倒れてしまった。妻が救急車を呼び、現場近くの病院に運ばれた。

 MRI検査などから左の中大脳動脈の梗塞が見つかり、すぐにt‐PAの点滴が始まった。

 しかし、十分な効果が確認できず、より高度な治療が必要と判断したこの病院は、Joinで連携している東京慈恵会医科大学病院に、スマホを使い、MRIの画像付きで「血管内治療が必要と思われますが、お願いできますか」と連絡をとった。

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