インターネットの情報や書籍などを見れば、骨盤底筋トレーニングの方法はいくつも出てくる。しかしこのトレーニングは骨盤底筋を意識しつつおこなうのがポイントで、人によっては正しくできないこともある。

「とくに高齢になると、うまく骨盤底筋を意識できない人が増えます。うちのクリニックでは骨盤底筋を正しく動かせるよう、理学療法士や看護師がトレーニングを指導します」(同)

 草野さんも個別指導を受けて、骨盤底筋トレーニングを3カ月実施。漏れる量や頻度は減ったが、外出時は不安でどうしても吸水パッドを外せないという。そこで関口医師は、骨盤底筋を鍛える運動として開発された「ピフィラティス」を草野さんに勧めた。

 ピフィラティスは、米国の婦人泌尿器科医師が提唱。約100種のエクササイズ中、骨盤底筋の筋電図を測定し、その中から尿漏れに対して運動効果が高い10種をセレクトしたもの。従来からある各運動に弾むような動きを加えることで、筋肉にいい刺激が与えられる。

 草野さんは同クリニックに併設されたスタジオで、専任トレーナーからマンツーマンでピフィラティスの指導を受けることにした。スタジオには週1回通い、自宅では10種の動きからやりやすい3~4種を選んで、毎日おこなうのが基本だ。

「草野さんは尿漏れが不安で、それまでソロソロとしか歩けませんでした。最寄り駅からスタジオまで15分ぐらいかかっていたのですが、3回目にいらしたときには10分もかからず、5回目のレッスンに来たときには『何年もお世話になっていたけれど、今日はパッドを外してきました!』と喜んでいました」(同)

 従来の骨盤底筋トレーニングは動きが少ないため、「正しくできているのかどうかわからない」「難しい」と感じる人もいた。しかしピフィラティスは明確な動きがあり運動が苦手な人でもやりやすく、骨盤底筋を意識しなくても鍛えられる。関口医師はそのメリットについて次のように話す。

「骨盤底筋だけでなく、腹横筋、殿筋、内転筋など、骨盤底筋と協調する筋肉も使うので、より尿漏れ改善効果が高いでしょう。また尿漏れが現れる年代になると、背中が丸まり背になる人が増えます。でもピフィラティスをすると自然に姿勢がよくなるので見た目も若々しくなるし、便秘解消にもいいでしょう」

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