東芝の財務の健全性は、原発事業の損失で急速に悪化している。16年12月末時点で自己資本がマイナスになる債務超過に陥る恐れがある。半導体事業の切り売りで2千億円程度を集め、17年3月末時点で債務超過を解消したい考えだ。

 そうしないと東芝株は東証1部から2部に降格となる。さらに1年以内に債務超過を解消できなければ上場廃止になる。金融機関が支援するため経営がすぐに行き詰まることはないが、原発の損失だけでも苦しいのに、もしLNGの損失が加われば、東芝の“解体”が進む。

 ここまで追い込まれた背景として、国策への依存が指摘されている。国や電力会社の意向を受ける形で、原発事業にのめり込んでいった。東京電力福島第一原発の事故後も、国内がだめなら海外があるとして、原発重視を転換しなかった。

 LNG事業も「原発輸出」が関係しているとされる。東芝は公式には、電力会社などに発電設備をLNGとセットで売るために契約を結んだと説明する。だがほかにも理由があるとみられている。フリーポートから数十キロ離れた所で計画する原発建設だ。

 東芝は09年に2基の建設を受注した。事業費は8千億円規模で、国が推進する原発輸出のモデルケースとして期待されていた。福島の事故もあって建設開始のめどは立っていないが、東芝としてはぜひ実現させたい計画だ。天然ガスの液化では大量の電力を消費する。現地の企業が将来的に原発の電力を買ってくれるはずだという思惑から、不慣れなLNG事業に参加し、国もそれを後押ししたという見方だ。

 個人投資家向け情報サービス「ロンジン」の和泉美治アナリストは「経営陣は原発事業を推進する国の戦略に安易に乗ってしまった。民間企業として損失リスクのチェックができていなかった」とみる。

 リスクが現実のものとなり巨額の損失が生じても、国は助けてくれない。経営陣の判断ミスの犠牲となるのは東芝の社員や取引先の従業員ら多くの人たちだ。

週刊朝日  2017年2月24日号

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