「無症状でも感染のリスクを伴う性交渉に心あたりのある場合は、恥ずかしいかもしれませんが、まず検査です」 (※写真はイメージ)
「無症状でも感染のリスクを伴う性交渉に心あたりのある場合は、恥ずかしいかもしれませんが、まず検査です」 (※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る

 過去の病気と思われていた梅毒が急増中だ。2012年と比べ16年の感染者数は約5倍とすさまじく、主に若い女性の罹患が増えているという。

 梅毒などの性感染症は通常、泌尿器科や婦人科、皮膚科などで診ることになるが、近年、耳鼻咽喉科でも診断されるケースがみられるようになってきた。

 オーラルセックスが風俗店だけでなく、一般的な性交渉でもおこなわれるようになり、口の中やのどからうつること(口腔感染・咽頭感染)が珍しくなくなったことも一因である。

 東京女子医科大学東医療センター耳鼻咽喉科の余田敬子医師は、

「当科でのどの梅毒と診断された患者さんの80%以上が、性器や皮膚には病変がなく、口やのどの症状から、最初に耳鼻咽喉科や内科を受診していました」

 と、口やのどの病変を見逃さないことの重要性を訴える。とくにオーラルセックスをしなくても、性器から全身に回った原因菌によって、口やのどに症状が出る場合もある。

 梅毒はとくに、通常はピンクに見える口の奥(のどの入り口)が白っぽく見える、という明らかな特徴がある。ただ、梅毒患者が戦後から急激に減ったことで、梅毒の特徴をきちんと理解して診断できる医師も減っているのが現状である。

 余田医師が診察した販売員の女性(22歳)も、微熱や全身の発疹、のどの痛みを訴えて受診したが、なかなか診断がつかなかった。クリニック3施設と東京女子医科大学東医療センターの他科、合計4カ所の受診を経て、1カ月かかってようやく余田医師から「梅毒第2期」の診断を受けた。

 女性は交際相手である男性からの感染しか思い当たる節がなかったが、男性が受診することはなかったという。この女性はペニシリン製剤の内服を8週間続け、順調に治癒した。

 梅毒だけでなく、尿道炎を起こす淋菌やクラミジアによる感染症も、のどから見つかることがある。

 埼玉県在住の会社員・木谷雄介さん(仮名・35歳)は半年の間に3回、重い扁桃炎を繰り返していた。通っていたクリニックの紹介で、扁桃を摘出する手術を受けるため15年12月に余田医師のもとを訪れた。

次のページ