詳しくは後述するが、「地域で行うがん検診が、がんの死亡率低下につながっているか」を指標とし、都道府県ごとにランキング。上位と下位各10位までの都道府県を挙げた。
一般的にがん検診には、対象となる集団の死亡率を下げる「対策型検診」と、個人の死亡リスクを下げる「任意型検診」とがある。市区町村が住民検診の一環として行っているのは前者の対策型検診で、今回の分析もこちらを対象としている。具体的には、胃がんの胃エックス線検査や胃内視鏡検査、大腸がんの便潜血検査、肺がんの胸部エックス線検査、乳がんのマンモグラフィ検査、子宮頸がんの細胞診だ。以前は乳がん検診で視触診も行われていたが、今年度から推奨されなくなった。
先の基本計画では、16年度末までに「検診受診率50%を達成(胃、肺、大腸は当面40%)」を目標に設定しているが、今も多くの地域が達成できずにいる。
ちなみに欧米でも一部のがんで検診が行われているが、乳がんの検診受診率はアメリカやイギリスは約70%(国民生活基礎調査によると日本は約34%)、子宮頸がんも約80%(同約33%)。定義が違うので一概に言えないが、日本とは比較にならないほど高い。国立がん研究センター社会と健康研究センター部長の斎藤博氏は、次のように言う。
「ヨーロッパの国々では検診の導入後に乳がんの死亡率が30%以上下がるなど、成果を挙げています」
欧米の例のように、がん検診でがん死亡率を下げるには、有効ながん検診を正しく実施する必要がある。だが、日本では検診受診率が低いばかりではなく、科学的根拠に基づかない前立腺がんのPSA(前立腺特異抗原)検査などを行う、100%受けるべき精密検査の受診率が低いなど、質の低い検診を行う地域もある。さらに、検診対象者の半数以上を占める職場の検診では、質を管理するしくみさえないという。
「質の悪い検診は不利益が大きく、効果も期待できない」(斎藤氏)
前出の埴岡氏も言う。
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