00年代に入って金属製のステントにコーティングされた合成樹脂(ポリマー)から炎症を抑える薬剤が染み出る「薬剤溶出ステント(DES)」が登場した。これにより、金属むき出しのステントが使われていた時代に多かった術後早期の再狭窄や血栓症は減少した。
しかし、ポリマーも生体にとっては異物であり、DESを長期間留置すると慢性的な炎症により再狭窄や血栓症をきたすことがわかった。最近ではDESの改良が進み、こうした合併症が少なくなったとはいえ、ゼロになったわけではない。
「BVSは、DESに残された課題を一挙に克服する『夢のデバイス(器具)』としての期待を担って開発されました。しかし、国内外の臨床試験の結果、留置後1年目の有用性はDESに劣らないものの、2年目以降はやや劣るという結果が示されています」(齋藤医師)
その原因として、(1)BVSは強度を維持するためDESの2倍程度の厚みがあり、血流が妨げられる可能性がある、(2)DESに比べ柔軟性に欠ける、(3)溶け方に個人差があり、長期間拡張を維持できる保証がない、といったことが考えられている。また、日本人には冠動脈がけいれんして起こる冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症が多く、強度を維持できるかどうかも不安が残るという。
齋藤医師はBVSを安全かつ有効に使用できる患者の条件として、慢性期の狭心症・心筋梗塞で病変のある冠動脈は2本まで、冠攣縮性狭心症の既往がないことを挙げた。(ライター・小池雄介)
※週刊朝日 2016年12月23日号より抜粋