そもそも中国では、映画やドラマ、アニメを放映するには、政府機関の審査を通る必要がある。脚本内容や映像シーンなどを厳しくチェック。例えば5年前、時空を超えて過去に行く作品群が、歴史軽視につながるとして一斉に禁止された。政府批判につながりかねない内容は確実に通らない。外国作品は内容変更や削除で公開することになる。
「『君の名は。』は恋愛映画で、バイオレンス、セクシュアル、体制批判といった要素がなかったので、編集に時間がかからなかったかもしれません」(前出の柏口氏)
別の事情も絡んでいたとみるのは、上海の映画関係者だ。
「中国が巨大市場であることは確かですが、ここ数年で映画館が急増したため、1館あたりの売り上げは苦戦しています。年内での売り上げ達成のための緊急対策でしょう。中国で公開される外国映画は年間本数が決まっていますが、今年は数の制限が緩和されました」
また、上海のテレビ局関係者は政治的な背景の影響を指摘した。
「中国と韓国は今、(政治的に)関係が悪化しているので、韓国が絡んだコンテンツが禁止されています。韓国映画が入るはずだった枠が空き、そこへ日本の作品が入ったかたちです」
スピード公開にはこうした背景もあるようだ。今回は内外の情勢に後押しされたが、逆にそれは今後、韓国映画のように締め出しを食らう可能性もあるということ。一筋縄ではいかないのが中国市場。本格開放はまだまだ先のようだ。
※週刊朝日 2016年12月16日号