知花:そういえば私が小さいころ、母がなぜか「石川啄木を朗読しましょう」と言い出したことがあって。

永田:お~、いいねぇ。

知花:当時は意味もわからないまま「エライ人の歌」「文学」という感じでサッと読んだだけでしたけど、のちに啄木の人生を調べる機会があって、その後で彼の歌を見ると「なんだこの弱気な男は!」ってイライラしたんです(笑)。でも逆に言えば、彼の歌をすごく身近に感じて。私たちと変わらないんだなぁって。

永田:あ、まさにそれが大事なの。歌人だからって、立派な人ばかりじゃないんですよ。学校では偉大な歌人がこんな素晴らしい歌を作ったので皆さん理解しましょう、と教えるけれど、それでは歌が肉声として伝わらない。肉声を聞き取るためには、やっぱりその歌人に興味を持ってもらうしかないんだよね。それとね、素晴らしい代表歌だけじゃなくて、つまらない歌も知ってほしいと思う。

知花:えっ、どうして?

永田:駄作も含めて鑑賞すると、いい歌がより際立つから。僕の大好きな斎藤茂吉なんて大部分はつまらない歌です。でも、つまらない歌を作ることも必要なの。いい歌ばっかり作ろうとすると、いい歌はできてこない。100首作って、1首いい歌ができたら上出来ですよ。だからこそ、ダメな歌も必要で、たくさん作ることも重要なんです。

知花:そうか……ちょっと勇気が湧きました(笑)。

永田:くららさんも、みなさんも、駄作を恐れずにたくさん作ってくださいね。

週刊朝日  2016年12月9日号より抜粋

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