「前々から、安倍首相の前のめりの姿勢が危険ではないかと危惧(きぐ)していた。トランプ次期米大統領の誕生でプーチン氏にとって、米ロ関係の改善が最優先課題になり、日本の優先順位が下がった。共同経済活動へのしつこい言及は、領土問題をのらりくらりと逃げるロシアのあつかましい常套手段とみるべき。このままでは、鼻先にニンジンをぶら下げられた馬のように半永久的に経済協力をさせられる羽目になる」

 日ロ両政府は5月の首脳会談で安倍首相が示した「8項目の経済協力」をベースに、極東での病院経営やハバロフスク空港整備などの案件に加え、健康寿命の伸長や人的交流の拡大など30項目の経済協力作業計画の具体策を18日にまとめ、19日の首脳会談で提示した。

 さらに、政府系銀行である国際協力銀行(JBIC)に働きかけ、ロシア資源大手ノバテクが進めるLNG生産基地(ロシア北西部ヤマル半島)開発に欧州の金融機関と約1200億円の協調融資と、欧米から制裁対象となっているロシア最大手銀行「ズベルバンク」に約40億円を単独融資することを決めた。

「JBICは北方領土交渉を優先する経済産業省色の強い官邸からの圧力で仕方なく投資せざるを得ない部分があるのではないか。そうすれば、二の足を踏んでいるメガバンクの融資も引き出し、日本企業が進出すると考えているのでしょう。官邸はロシアの譲歩を引き出すために遮二無二なんです」(財務省関係者)

 JBICの担当者は本誌の取材に対し、「(圧力で)融資せざるを得ないということではない。ビジネスありきで審査した」と語る。

 しかし、ロシアはそんな安倍政権の足元を見透かすように、19日の首脳会談でプーチン大統領は「今年前半の日ロの貿易額は前年同期より36%減少した」と指摘した。

 山口での首脳会談の翌日(12月16日)に東京で両首脳出席の経済会合を強引に打診し、経済協力色を露骨に強めている。

 現状のまま、共同経済活動をのめば、ロシアの主権を認めることになり、「国を売るつもりか」(自民党の幹事長経験者)という世論の批判は免れない。

 ロシアとの経済交流に取り組む「ロシアNIS経済研究所」の高橋浩副所長はシビアな見方だ。

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