さて、この伝説、どれほどの信憑性があるのか。長年、探索者たちの間で伝説の根拠とされてきたのが、光照やその息子が埋蔵の経緯や隠し場所を子孫に書き残したという「極秘の古文書」だ。探索者の手記などによると、この秘文書は複数の巻物や絵図からなる。これが少なくとも2セットあり、大阪と三重の旧家で代々秘蔵されてきたが、太平洋戦争後、その内容が新聞報道で大々的に世間に広まった。全国各地から一獲千金を夢見る探索者が現地を訪れ、地元は一時、ゴールドラッシュの様相を呈するようになったという。

 ここで気になるのが秘文書の真贋だ。記者はこれまで、日本最大の埋蔵金伝説を生み出したこの秘文書をこの目で見てみたいと思い、町教委やかつて宝探しに関わった地元関係者らに問い合わせてみたが、残念ながら、実物を持っている、あるいは、その所在を知っているという人物を見つけることはできなかった。

 関係者によると、秘文書の原本はそれ自体が探索者の間で高値で売買されるほどの価値を持っているため、所有者が実物を一般公開することはもちろん、宝探しのライバルとなりうる他人に見せることはほぼないという。

 そんな秘文書の内容が、なぜ新聞に報じられたのか。埋蔵金伝説をめぐる過去の新聞報道をたどっていくと、戦後間もない時期のある新聞投稿にたどりついた。掲載紙は1949年5月18日の「よろん新聞」。当時大阪で発行されていた日刊紙だ。

 投稿のタイトルは「四億両の家宝」。国立国会図書館に保存されているマイクロフィルムからその内容を要約すると以下のとおりだ。

 税務署員である「私」がある時、税滞納者宅を訪ね、家の主に財産差し押さえの話を切り出した。すると、彼は家の奥から「わが山本家伝来の家宝」だという掛け軸を出してきて「これは豊太閤時代の絵図で、黄金4億両の軍用金埋蔵場所を記した巻物だが……」と話し始める。この山本家はかつて豊臣家に出入りしていた豪商で、大坂の陣の際に軍資金を埋蔵した絵図を預かったのだという。白昼夢を見ているような気分になった私に、山本氏は「私もいよいよ発掘事業に着手する決心をして下準備にかかっています。これが当たれば差し押さえなんか、おかしくって……」と笑った。

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