大統領退陣を求めるデモ (c)朝日新聞社
大統領退陣を求めるデモ (c)朝日新聞社

「下野して大統領が亡命するのが国にとって最もいい解決方法──。極端だがこんな話まで出ているのに、検察聴取を引き延ばすなど任期全うを狙って動き出した。やはり不通(疎通できない)。立場をわかっていないか、権力に未練があるのか」(韓国全国紙記者)

 スキャンダルで窮地の朴槿恵大統領が攻勢に転じ、韓国社会は未曽有の混沌(こんとん)へ突入している。

 韓国検察は11月20日の崔順実容疑者、青瓦台(大統領府)前秘書官らの起訴を前に大統領へ聴取を要請していたが、大統領の弁護士は「弁論準備が整っていない」(中央日報11月18日)と拒否。〈崔氏との共謀〉を回避するためとみられたが、検察は逮捕した前秘書官から「VIP(大統領)の指示事項を記した手帳と部下が大統領の指示事項履行をチェックするリストを確保した」(京郷新聞同日)といわれ、19日には検察が朴大統領を立件したと「被疑者朴槿恵大統領」(同)の見出しが躍った。

 韓国紙記者が言う。

「100万人のキャンドルデモで退陣すれば、この規模のデモで退陣という前例を作ることになり、簡単ではない。次の手段は弾劾(だんがい)で、これには訴追できる明らかな理由と弾劾決議には国会議員3分の2の賛成が必要。ねじれ国会なので与党から29人の造反が出るかが鍵で、ここで可決されても保守系の裁判官で固められた憲法裁判所が国会の議決を認める見込みは低い。弾劾までは最長1年ほどかかり、任期ぎりぎりに。そのため大統領側は弾劾発議を誘導しているのではないかという見方も出ています」

 沈黙していた大統領は16日、釜山で起きた崔容疑者絡みのリゾート建設を巡る不正疑惑の徹底捜査を命じたが、「自身を棚に上げたブラックコメディー。4次元で生きている」と30代会社員は嘆息した。

 大統領退陣を迫る野党には好機だが、「一枚岩になれず迷走するばかり」(前出記者)。支持率は3週連続5%と最低を記録(韓国ギャラップ11月18日)し、「88.5%が大統領の退陣を要求」(韓国日報、19日)。しかし「朴大統領を愛する会」が集会を開くなど、「親朴系議員が事態を混乱させて時間を稼ぎ、大統領の支持回復を狙っている」(同前)とも。

 孤独なお姫様が暴走する中、韓国の千鳥足はまだまだ続きそうだ。

週刊朝日 2016年12月2日号