ただ、当初の「コンパクト五輪」から、関東圏内の既存施設を利用する「広域開催」にシフトした東京大会は、開催エリアが広がれば広がるほど、選手の輸送費やテロ対策などセキュリティー費が増えるジレンマを抱える。ロンドン大会にはなかった、野球・ソフトボールや空手など5競技の追加もある。「復興五輪」をかなえようと、野球・ソフトなどの1次リーグを東日本大震災の被災地で開催するとなれば、その分の費用も増える。
東京大会の4年後、24年の招致からボストン、ハンブルク、ローマが撤退し、IOCは危機感を募らせる。撤退は主に市民への財政負担が理由だ。
IOCにとって、人気にかげりが見える五輪に意欲的で財政的にも安定している東京は、いわば“タニマチ”だ。五輪を持続可能なイベントにするために、世論も納得する適正な予算規模で開催することが最優先課題でもある。
全体費用を精査するリーダー不在、都や組織委の持ち寄り方式によって、「どんぶり勘定」のままの東京の大会準備をこれ以上IOCが看過できないのには、そんな事情もあるのだ。
※週刊朝日 2016年11月18日号
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