と電話で申し入れ、まず、これを知事にのませた。協議が始まってからも、見直しを最初から拒否する姿勢は見せず、丹念に都側の主張に耳を傾けたという。ある関係者は、

「4者の主導権を握ったIOCは、自分たちのペースに議論を引き戻した」

 と分析する。

 デュビ五輪統括部長は、ボート・カヌーで宮城・長沼、バレーボールで横浜アリーナと東京都の外への変更案も、

「選択肢としては残っている」

 とは述べた。今月末に開く小池知事やジョン・コーツIOC副会長らによるトップレベルの4者協議で結論を出すとしたが、議論は東京都外への変更案ではなく、IOC理事会で承認済みの現行計画の縮小案を軸に進む可能性が高い。

 会場整備のコスト削減で小池知事の顔を立て、競技会場の移設までは難しいという結論になるのでは、という見方が大勢を占める。

 招致時は、7340億円と立候補ファイルに記した開催費用。それが、昨年7月、森喜朗・組織委会長が、「総額は最終的に2兆円を超すかもしれない」と発言し、その後、舛添要一前東京都知事も、「このままでは3兆円になるだろう」と述べていた。

 円安などによる建設資材や人件費の高騰も背景にあるが、「3兆円を超す可能性」を報告した都の調査チームは、そもそも立候補ファイルには、都や国が負担することが見込まれる警備や輸送などの費用がほとんど計上されていなかったと指摘している。

 小池知事が選挙中から、

「2兆、3兆ってお豆腐屋さんじゃあるまいし」

 と、膨らみ続ける五輪経費を揶揄(やゆ)していた演説が、今も語りぐさになっているが、大会に一体全部でいくらかかるのかは、東京都も組織委もいまだ示せていない。五輪費用の全体像は豆腐同然、まだ真っ白なのだ。

 それでは適切な五輪経費とはどのくらいなのか。

 東京の参考事例となりそうなのが、同じ先進国の首都で大都市という共通点がある2012年のロンドン大会だ。大会5年前から、開催費用を93億ポンド(約1兆2200億円)と公表し、英国政府が大会本番まで、公的資金の推移や使途を定期的に公表した。最終的に総経費は2兆1千億円に上ったとされる。

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