「自分たちは若手行員の教育を上手にやっていると思っている地銀がほとんどだと思います。トップには『裸の王様』が多い。問題意識を持って人材教育をすればいいのですが、今から種まきをするようでは遅い。もう芽が出たぐらいでないと手遅れです」

 地銀は再編の果てに消えるのか。

 火花を散らしている九州にある地銀(第二地銀を含む)は、全部で18行。今のところ、「ふくおかフィナンシャルグループ(FG)」「西日本FH」「九州FG」の三つが中核的存在だ。これに加え、山口県から北九州銀行(福岡)を開業して九州進出を図る「山口フィナンシャルグループ(FG)」も四つ目の勢力となって対抗している。

 支店長は「もっと減る。最後は二つ」と予測している。地銀の将来について、こう続ける。

「(ITと金融が融合する)フィンテックやAI(人工知能)の出現で、銀行窓口などの人も不要になる。いま我々が考えるべきは、どうやって自行の人材の高度化を図るかです。地銀は金融業だけではやっていけない。将来は農業や小売業も手がけないと。『銀行』という名前も消え、流通業から金融に参入したイオンなどに対抗できるような企業グループ化が進む。そうでないと、地銀はもう生き残れません」

 実際、横浜銀行や群馬銀行(群馬)、東邦銀行(福島)、池田泉州銀行(大阪)などは続々と証券業務に進出。三井住友銀行や秋田銀行(秋田)はコメ作り、鹿児島銀行はタマネギ栽培など、農業に手を広げる動きも出ている。

 経営統合しながら業態も多様化していく地銀。当面は、全国各地の再編劇が続きそうだ。S&Pレーティング・ジャパンの吉澤亮二・主席アナリストが言う。

「資金需要がない場所ではビジネスができない。県ごとにある地銀も昔は意味があったが、今では不自然。結局はどこの地域でも、需要のある中核都市に収斂していく。九州だったら福岡、東北だったら仙台。中核都市では止まらずに東京を目指すかもしれない」

 一足早くマイナス金利を導入した欧州の動きが未来の日本を暗示している。

 報道では、ドイツ銀行が世界で9千人、英ロイズ銀行は1230人の新たな人員削減を発表。直近の約1カ月間に欧州の各金融機関が発表した人員削減計画を合算すると、2万人規模にのぼるという。

「欧州の銀行では審査業務にAIを使う動きが加速しています。人員削減の要因は、短期的にはマイナス金利、中長期的にはAI。日本の地銀も、職員や店舗を減らさざるを得なくなるのではないか」(マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリスト)

 地銀の再編が、私たちにどんな恩恵をもたらすのか。吉澤氏はこう話した。

「地銀再編後、成長が鈍化すれば、顧客サービスが低下する可能性はあります。そもそも、こちらが支払う金額に見合ったサービスしか期待できないのは当然のこと。これまで地銀は、採算の合わないサービスをしてくれていたとも言えます。フリーランチはない、ということです」

週刊朝日  2016年10月28日号より抜粋

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