AI(人工知能)やロボットとの共存が当たり前になる20年後、日本の会社から正社員は消えている──。衝撃的な未来を予測した厚生労働省の報告書「働き方の未来2035」が注目されている。企業が続々と副業や兼業、在宅勤務を解禁するその先に何があるのか?
【2016年50歳→2035年69歳 女性】
《50過ぎまでは、会社で経理を担当していました。でも、経理業務はどんどんAIに代替されていきました。15年ほど前に転職し、いまは地域の病院に勤めながらカウンセラーの資格も取得しました。私の仕事は、AIを使った問診のお手伝いです。患者さんは不安で「すぐ治りますよ」と声をかけるだけで気持ちの支えになり、人間にしかできない仕事です》
【2016年36歳→2035年55歳 男性】
《自動車メーカーA社に勤めていました。自動運転技術が出はじめたころ、職場の仲間数人で「自動運転の警備巡回マシンをつくろう」と盛り上がり、本業のかたわら開発に打ち込みました。製品化して会社を立ち上げましたが、収益化には時間がかかりそうだったので、週の半分はA社に勤務し、残りの半分で自分たちの会社を経営していました。3年ほど経ったころからビジネスが軌道に乗り、A社を退職して自分たちの会社の経営に専念しました。世界各地に赴き営業し、いまでは50カ国以上の警備会社に採用されています》
【2016年61歳→2035年80歳 男性】
《新卒で入社した会社の定年は65歳でしたが、人手不足で結局70歳まで働きました。といっても66歳からは小さな会社を起業したので、それが副業となり、71歳以降も働くことにしました。といってもインターネットで受注したボランティアの仕事です。私の専門だった仕事はすっかりAIを搭載したロボットに取って代わられたのですが、文化保護団体が昔の仕事のやり方を保存したいということで、私に仕事が来ます》
──実はこれ、AIなどの技術が進化した2035年を舞台とした働き方のシミュレーションで、厚生労働省が8月に発表した報告書「働き方の未来2035」に登場する未来予想図だ。
30ページに及ぶ報告書の冒頭にはこう記されている。