こう話すのは『出身県でわかる人の性格』の著者で、出版プロデューサーの岩中祥史氏(65)。山梨の知識の低さの背景には、当地で受け継がれる金銭の互助組織「無尽」があると指摘する。

「金融機関ではなく、地域や職場に広がる無尽の仲間を頼りにする意識があります。金融商品の知識がなくても、仲間の強いつながりでやっていける風土です」

 確かに、山梨の消費者ローン利用者の比率は全国で下から2番目。では、なぜ金融トラブルが多いのか。

「普段は無尽頼みで金融知識が低いだけに、たまに金融機関などと接点を持つとトラブルになりやすいのかもしれません」(岩中氏)

 調査した項目は、金融知識だけではない。株や投資信託を買ったことがあるかなど、投資に対する意欲や姿勢も幅広く聞いている。

 たとえば、Q1「損失回避傾向」の意識。年5%の利益を見込める投資話だが、投資しないと答えた人の比率は山形が全国で最も高かった。利益を得るより損を避ける意識の強さが表れた。

 同様に、Q2「近視眼的行動バイアス」は、将来的に増えたお金を選ぶか、少額でもすぐに手にできるお金を選ぶかの意識の差が出る。山形は47位。じっくりと待つ姿勢のようだ。

「おしんや上杉鷹山に代表されるように、質素で我慢強く粘り強い風土。現在は高齢化も進み、冒険的な新たな投資よりも、蓄えを大切にする気風が表れているのではないか」(岩中氏)

 一方、隣の秋田はQ2の回答が3位。山形と対照的だ。気長に待って増やすよりも、今すぐお金を手にしたい気風なのだろうか。

『ビジネスの9割は「県民性」でうまくいく』の著者で、経営コンサルタントの矢野新一氏(67)は、秋田の県民性をこう分析する。

「東北で最初にミニスカートがはやったのは、秋田と言われます。ノリがよく見えっ張り。豊かな米どころだったため、『秋田の着倒れ食い倒れ』と言われました。山形と違い、享楽的な気風です。ケチで、近視眼的なわけではありません」

 秋田は老後の資金計画を持つ人の比率が全国で最も低かった。

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