今、全国の地方銀行幹部から注目されている資料がある。日本人のお金に関する知識や判断力を、初めて公的・大規模に調べた「金融リテラシー調査」だ。結果を見ると、金融知識の高さや低さ、投資意欲の強さや弱さなど、お金にまつわる地域性が浮かび上がる。
その調査で特に衝撃を与えたのが、山梨だ。その理由を東日本の分析とともに見てみよう。
「都道府県別データが豊富で、地銀の営業戦略策定にも生かせる内容です。データの質と量ともに充実していて海外からも注目され、英訳作業を進めています」
こう胸を張るのは、日本銀行の川村憲章・金融知識普及グループ長。地域の人口構成に合わせた18~79歳の2万5千人を対象にしたネット調査で、「金融広報中央委員会」(日銀が事務局で、政府や自治体で組織)が6月に結果をまとめた。
ねらいは日本人のお金の知識や意識をつかみ、今後の金融教育に生かすこと。調査結果に一番驚いたのは山梨の金融関係者だろう。
「人生の3大費用は何か」「金利が上がると債券価格はどうなる」など、正誤問題の正答率が全国最下位。おまけに、金融トラブルを経験した人の比率が全国で最高。「金融知識が低いとトラブルにあいやすい」との傾向の典型例になった。
日銀甲府支店長の竹内淳氏は8月27日付山梨日日新聞のコラムで、「『意外性』の山梨」と題して調査結果について記している。
〈ところで日本一でもワーストは避けたい。日本銀行が6月に発表した『金融リテラシー調査』は意外な結果だった。(中略)詐欺などから自分や家族を守るために、金融リテラシーを高める必要がある〉
「甲州商人」で知られる山梨の金融知識が、どうして全国で最下位なのか。
日銀甲府支店に尋ねると「県民性なのかという話も当初はありましたが、分析できていません」という。
そこで、本誌は2人の県民性研究者とともに、調査結果の分析に着手した。
「綿密ですばらしい調査。眺めていると大変おもしろく、半日つぶれましたよ」