乃木坂46は先行するAKB48のライバルとして結成された。屈託ない笑顔だが中高時代に不登校やいじめの経験者もいる。今日最前列で歌っていても明日は後列に置かれるリスクがある。人生で波風受け続けた中高年には心に響く話のはず。応援するっきゃない。

在宅ファンとなって3年。今年になって生の乃木坂46を見たい気持ちが抑えられなくなった。しかし、いくら「逢いたさ見たさに怖さを忘れ」といっても、じいさんがアイドルライブに行って若者にじゃけんにされたらダメージは大きい。悩みに悩んで思いついたのが乃木坂ファンが集うサイトにアクセスして直接問いかけることだった。

 血圧高めの67歳と正直に明かすとともに、どんな曲が好きでどれほど乃木坂46が好きかを熱意を込めて書き込んで投稿した。

 すると「年齢なんか関係ないです」との返信がたくさん寄せられた。すっかり気をよくしてライブについていろいろ質問すると、持参する物からなにから、イチから教えてくれた。

「ライブ中じっとしているとお地蔵さんって言われますからサイリウム(色を切り替えられるペンライト)振ったほうがいいですよ」

 シニアの悩みのトイレの問題にも、

「曲が終わったときに行けばいいです、次の曲が終わるまで通路で待機になりますけど混みませんから」

 とていねい。

 なんて素敵な若者たちだ。たくさんの人に乃木坂46を応援してほしいという気持ちをリスペクト。

 さていよいよ入場だ。入り口が指定されているので間違えないように緊張して行列に加わる。簡単な手荷物検査とチケットの照合があり席へ。私は三塁側のスタンド。高さは中間点くらいでステージとその先の大型モニターが両方見える。メンバーの顔が肉眼で見えなくてもモニターで確認できるのがいい。

 そわそわしているうちについに開演時間。前奏曲が響き期待感が球場全体に膨れ上がる。3日間のライブ最終日で初めて青空が広がる。天気にあわせて急きょ決まったかのように最初の曲として「何度目の青空か?」が流れる。パフォーマンスするメンバーに向かって、ファンが振るサイリウムがカラフルに発光し続けている。3万5千人を収容した神宮球場は蛍が群れ飛ぶ池と化した。

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ