小池百合子新東京都知事(64)が勝負に出た。11月に予定されていた築地市場の移転を延期すると発表したのだ。7月の都知事選の告示直前に出馬を取りやめた宇都宮健児氏(69)は、かねて築地移転の問題点を指摘していた。小池氏の決断をどう見るのか。
今回の移転延期の決断は小池氏の公約どおりとはいえ、相当に勇気が必要な重い決断だったと思います。大変評価していますし、歓迎したいと思います。
私は8月30日に都庁で小池氏と会い、築地の移転延期も含む「今すぐに取り組むべき」都政の課題10項目の要望書を手渡しました。私と会うこと自体が異例のことでしょうが、都民の声を聞いてオープンに都政を行う姿勢を見せていると評価できる。今後のプロジェクトチームでの徹底的な調査と、情報公開をしっかり進めてほしい。
小池氏は今後、移転の中止も可能性の一つとして考えざるを得なくなるのではないか。最も重要なのは、土壌汚染の問題です。都が実施した調査は、本来モニタリングをすべき地点が約300カ所も抜け落ちるなど問題点が指摘されています。都の調査をうのみにせず、第三者によるチームで検証する必要があります。
移転が遅れると、跡地に建設予定の環状2号線の完成が東京五輪に間に合わず、大会の運営に混乱が生じるとも指摘されています。しかし、五輪が1カ月程度のイベントなのに対し、市場はその後も続く。五輪のために市場の安全性をおろそかにできません。
私たちは五輪は当初の計画から一寸たりとも変えてはならないと思い込まされていますが、そんなことはない。新国立競技場にしても当初、関係者は「8万人収容のスタジアムを国際オリンピック委員会(IOC)に約束してしまったから」とザハ・ハディド案に固執していましたが、建設費の膨張が批判されたら、結局は覆った。取り壊してしまった旧国立競技場を補修して席数を増やすなど、本来はもっとお金のかからない選択肢があったはずです。