著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、俳優の白石加代子さんが選んだのは「天春 四谷店の天丼、蜆汁」だ。
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このお店との付き合いはかれこれ20年以上。最初は妹たちが通っていたの。今も、家族でちょっと嬉しいことがあると「天春、行こうか?」って。そういうお店です。ご主人のお人柄が、お料理にもお店の雰囲気にもよく表れていてね。大げさなことは何もないけれど、居心地がいい。
天ぷらは、特にかき揚げが絶品。分厚い紋甲イカだけを使ってあって、食感はサクサク。タレも甘すぎず、きりっとしているところも好みです。舞台公演中には、お弁当をお願いすることもあるんですが、力仕事の裏方さんたちにも大好評なんですよ。少しでもできたてを食べてほしいから、時間を見計らって主人に取りに行ってもらうんです。
それにこの蜆(しじみ)汁、すごいでしょ? しゃかりきになって殻から身を出して、お汁と一緒にしゃしゃっと掻き込んで食べるんだけど、それが楽しくて。
食事って、味の良さだけじゃなくて、心を尽くしてくださる、そのお気持ちの中でいただくのが最高に幸せだな、と。このお店に来るたび、思うんです。
※週刊朝日 2016年9月9日号