来月7日に民進党の代表選挙が行われる。メディアでは共産党との野党共闘に関する議員のコメントが報道されているが、それは印象操作ではないかと作家の室井佑月氏は疑問を呈する。

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 8月25日に告示し、9月7日に投開票を行うという民進党の代表選挙。報道によれば、野党間の連携の在り方について、議論し、代表が選ばれるようだ。

 具体的にいえば、共産党とこのまま連携していいのかってことで揉めている。

 たしかに揉めていることは事実だけれど、あたしはこの件に関し、報道のされ方に疑問を持っている。

 なぜ、共産党と連携することを嫌がっている議員の声ばかりピックアップされるんだろうか。

 もう一方の、自民党ときっちり対峙できるよう民進党も「格差是正」「TPP反対」「憲法改正反対」「脱原発」でほかの野党とがっちり力を合わせていくべきだ、という議員の声をなぜ取り上げない?

 一応、岡田代表の声として、「参議院選では野党共闘がうまくいった」というぐらいのものは取り上げられている。が、積極的に「反自民の受け皿になるよう、ますます野党は政策から連携を強めるべきだ」という議員の声は取り上げられない。

 おかしいったらない。そういう発言をする人がいないのか? たとえば、連合などの組織の応援を失ったら、選挙で不利になると思っているとか?

 違うよな。衆議院選のことを考えれば、自分の地盤にほかの野党候補を立てられないほうがいいわけで、とすれば積極的に野党の連携を訴える議員だっているはずだ。

 と、ここまでしらばっくれて書いてしまったが、あたしは知っている、民進党の中に「格差是正」「TPP反対」「改憲反対」「脱原発」を強く訴える人も多くいることを。べつに隠してない、その人たちは堂々と自分の意見をいっている。

 つまり、あたしがなにをいいたいかというと、これってマスコミの印象操作なんじゃないかってこと。

 
 マスコミの報道のされ方によると、まるで選挙に勝ちたい一心で、共産党と組んでしまったおろかな民進党となってしまう。

 そういった意地悪な意図に気づかず、「野党統一候補を、これからの既定路線かのように結論づけるべきではない」などと、嬉々としてマスコミの前で発言している民進党の一部議員はほんとうに馬鹿だ。

 まさか、自分らがさんざん意地悪されてきたマスコミ報道、

「共産党と組むと、民進の保守の票が逃げる」

 みたいな嘘くさいニュースを心から信じてるってわけじゃあるまいな?

 ニュースより参議院選の結果で、はっきりわかったろ? 1人区で野党が共闘したから、接戦で勝てたところや負けたところがあったんだって。

 わかってないのかもしれない。都知事選でのこの人たちのやり方を見れば。

 とにかく、思想が真っ二つに分かれる代表戦、「負けたほうが党を出て行く」ぐらいにいわないと、穴埋めニュースみたいに扱われる。そして、国民から馬鹿にされてる、といった印象操作をまたされる。

週刊朝日  2016年8月12日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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