──当時、池田はウェートトレーニングを積極的に導入していましたね。

荒木:いや、すごかったですよ。ユニホームがパツンパツンで……。ベンチでは蔦(文也)監督が足を組んで、どーんと座ってるのがマウンドからはっきり見える。恐怖感がありました。

──初回に江上さんに2点本塁打を打たれました。

荒木:生意気ながら「こうやって投げておけば打ち取れる。困ったときにはこうすればアウトが稼げる」というものを自分の中に持っていた。それが池田にはまったく通用しなかった。

──六回には水野さんがバックスクリーンへ本塁打。

水野:あれはすごく飛びましたよね(笑)。打った瞬間、いったなと思った。それまで甲子園で本塁打が出ず、少し焦っているところでした。荒木さんが鼻をつまんだんですよね。

荒木:ホームランがつらいというより、試合が終わってくれないのがつらかった。途中で戦意を失っているわけですから。甲子園大会のむごさというか……。

水野:コールドがないしね。大差がついたら終わりたいよ。気分も乗らないから。僕も翌年のPL学園戦で同じ思いになりましたもん。もういいよって。

荒木:最後の夏の大会だったから、戦いたいって気持ちがあるんだけど、相手投手は畠山準だし、ゲームとしてはもう無理だろうと。早く終わってほしいという一心でしたね。涙も出ない。つまんないだけです。当時の映像を改めて見ると、ミスもあるし、投げ方もちゃらんぽらん。「もっと一生懸命やれよ」って言いたいくらい。

──結局、14-2で池田が大勝。荒木さんの自責点9はワースト記録ですか。

荒木:まあ、ほかにはないと思います。

──池田が荒木さんの癖を把握していたという説も。

水野:全然。そんな最先端の野球なんてゼロ(笑)。捕手の松本(達夫)さんのリードはわかってたけど。

──そうなんですか?

水野:うそだよ(笑)。池田は前の試合のビデオを見ることもないし、ミーティングもない。蔦監督はいつも飲みにいっちゃってるんだもん。

週刊朝日  2016年8月12日号より抜粋

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