血管のように全身に張り巡らされていて、体内にたまった老廃物や余分な水分を処理するリンパ管。それが何らかの理由で傷ついて水分などの排出が滞り、手や足にむくみが出るのがリンパ浮腫だ。
最も多いのは、がんの手術の際に、わきの下や骨盤にあるリンパ節を切除することで起こる「続発性(二次性)リンパ浮腫」で、乳がん患者の約50%、子宮・卵巣がん患者の20~30%、前立腺がん患者の8%に起こるといわれる。このほか、生まれつきリンパ管の機能が落ちている「原発性リンパ浮腫」がある。
リンパ浮腫は、健康な人が日常で感じるむくみとはまったく違う。進行性であり、放置すると腕や下肢の皮膚がむくみで伸び、変形する。歩行困難になり、日常生活に支障をきたしている患者も少なくない。
リンパ浮腫の治療には、特殊な包帯やストッキングなどでむくみを抑える「圧迫療法」、たまったリンパ液の流れを改善する「用手的リンパドレナージ」(以下、ドレナージ)、圧迫療法をしながらの軽い運動や体重の管理、蜂窩織炎(ほうかしきえん)の合併症を抑えるスキンケアなどがある。こうした「複合的治療」(複合的理学療法)が進行を抑えるために重要で、必要に応じて外科手術を実施する。
複合的治療を入院で実施していることで知られるのが、リムズ徳島クリニックだ。
関東地方在住の森本直美さん(仮名・50歳)は、30代のときに子宮頸がん手術を受け、卵巣と骨盤内の複数のリンパ節を切除した。右足に浮腫の兆候が現れたのは、がん手術から2年後のこと。家族旅行の帰り、右足だけむくんで、靴が入らなくなったのだ。むくみは日を追うごとにひどくなっていったが、痛みなどの症状がなかったため、そのまま放置していた。
むくみが急速に悪くなったのは、その3年後だ。月に2、3回、高熱を出すようになり、それに伴い足も腫れていった。心配した家族が地元の大学病院の医師に相談し、紹介されたのが、リムズ徳島クリニックだった。理事長の小川佳宏医師は、入院当時のことをこう振り返る。