オーディオの音というのは、昨日とまったく同じ条件で、同じ装置を使い、同じCDをかけたとしても、なぜかしら同じ音がしないものである。あるとき、たまらなく良い音が出て感動して、「よし、完璧だ!これ以上もう何も求めるものはない!」と思っても、次の日に聴いてみたら全然良くないなんてことは、もうしょうっちゅうなのだ。
使ってるスピーカーやらアンプやらが安物だから音質が安定しないのではないかと考え、「いつでもあの感動が蘇える」状態を夢見てグレードアップを繰り返してきた。ところがいつまでたっても音の好調・不調のムラは消えず、むしろその差がますます酷くなっている気がする。これはきっと、オーディオ機器が、たんなる電化製品ではなく、楽器的性質を多分に反映しているせいなのだろう。
そういえば今年(2009年)はじめに、ワシントンで行われたオバマ大統領の就任式で、氷点下の野外のため楽器の調律がうまくいかず、やむなく2日前に録音したものを流したというエピソードがあった。
楽器は、冷えすぎるとチューニングが狂う。ボディや弦は温度によって膨張したり縮んだりするし、また、湿度も音程に関係している。オーディオ機器を楽器だと考えたなら、そういった気候などの影響で好不調が出るとしても不思議ではない。
音楽を再生する部屋の空気が、あまり乾燥しきっていると、出てくる音もヒリヒリとして潤いがないものになる。そこで加湿器などを使うのもいいのだが、ポトス等の観葉植物の鉢植えを置いてみると面白い。時折、窓から陽光が射し込んでくると、植物が水分を蒸散して、見る見る音がよくなっていくさまを体験できるのだ。
さらに、オーディオ機器だけでなく、部屋のなかにある様々なものが固有の音程を持っており、それらの共振音が音楽に混じって音を悪くすることもある。
当店では、営業時間中、20個を超える電球が常時点灯しているが、そのなかのひとつが切れかかって、電球内部のフィラメントが「チーーーー」と小さな音をたてながら振動することがある。これが曲者で、この「チーーーー」が、オーディオ再生音のハーモニーを乱すのである。
なんだか音が変だな、高音がキンキンしてスピーカーが苦しそうだなと思っていたら、「パチッ!」と電球が切れる。ああ、そうか、これが原因だったのだなと、いつも電球が切れてからわかる。そうして切れた電球を新品に取り替えたなら、ウソのように音が正常に戻るからだ。
特に今のような梅雨どきには、わがカットハウスでは、週に1,2個は電球が切れるからなんとも憂鬱だ。「ハウス・オブ・ブルー・ライツ」である。
【収録曲一覧】
1. ハウス・オブ・ブルー・ライツ
2. マイ・ファニー・ヴァレンタイン
3. ダイアン
4. アナベル
5. 恋した時は
6. ホワッツ・トゥ・ヤ