女優としてのキャリアをスタートさせたときから、「いつか声の仕事をやりたい」と、漠然と思っていた室井滋さん。
「メイクをしなくてもできるからという単純な理由がひとつ(笑)。あとは、ドキュメンタリーでもアニメーションでも、映像を作るまでにたくさんの人の手がかかっていて、最後に声を吹き込むのは、リレーで言えばアンカーみたいなものじゃないですか。どうやったら見てくださる方に伝わるだろうかと考えるとワクワクするし、やりがいもありますね」
お金のなかった若い頃は、友達に赤ちゃんが生まれると、絵本を朗読して録音したものをプレゼントしたりしていた。やがてナレーションの仕事にも携わるように。海洋生物たちの冒険ファンタジー「ファインディング・ニモ」では、ニモの親友・ドリーの声を担当。その後も、東京ディズニーシーのアトラクションや氷上のミュージカル「ディズニー・オン・アイス」でもドリーの声、と縁は続いた。
「でもまさか、時を経て映画の主役になるなんて。やってくれたね、ドリー!(笑) 今回は、映像の透明度も上がっていて、より深く潜ったなという感じ。もともとドリーは、重度の忘れんぼうっていう設定もあってちょっと不思議なキャラクターだったんですけど、今回のお話で、前作の疑問が氷解しました」
女優として活動するだけでなく、CDをリリースしたり、エッセーがベストセラーになったりと、長きにわたってマルチな才能を発揮しているが、この13年の間に室井さんの仕事の幅はまた広がり、近年は、絵本作家として5冊の本を出版。読み聞かせで全国を回ったりもしている。