日本ALS協会会長岡部宏生さんおかべ・ひろき/東京都出身。2006年春にALSを発症し、翌年春から在宅療養に。09年2月に胃ろう造設、同年9月に気管切開を行い、現在は人工呼吸器を使用。月に20日は協会の活動などで外出し、積極的に国内外で多くの人々と関わって情報を発信している (c)朝日新聞社
日本ALS協会会長
岡部宏生さん
おかべ・ひろき/東京都出身。2006年春にALSを発症し、翌年春から在宅療養に。09年2月に胃ろう造設、同年9月に気管切開を行い、現在は人工呼吸器を使用。月に20日は協会の活動などで外出し、積極的に国内外で多くの人々と関わって情報を発信している (c)朝日新聞社
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 日本ALS(筋萎縮性側索硬化症)協会会長の岡部宏生さん(58)が障害者総合支援法改正案の審議のため国会に招致されたのは、5月23日。その際の質疑を通じ、ヘルパーとの「口文字(※1)」を使った会話は多くの人の目に触れた。岡部さんのしゃれたいでたちも話題に。岡部さんに話を聞きました。

*  *  *
 議員らから「今回のことは本当に真剣に受け止めなければならない」「さまざまなコミュニケーションの方法について、もっと理解を深める必要がある」など、うれしい反響がありました。街中で「ニュースを見ました。頑張ってください」と声を掛けられることもしばしばあり、驚いています。

 外出時はいつもあのような服装です。ジャケットは着ないことが多いですが。帽子は、黄斑変性症という目の病気のせいで議場の照明がまぶしく、ヘルパーの顔が見えないので、委員長に許可を得てかぶりました。

――今回の意見陳述までには曲折があった。当初5月10日に予定されていた衆議院厚生労働委員会への招致が突然、見送られたのだ。

「時間がかかって質疑が十分できないので、別の人に代わってほしい」と言われたときは、怒りより驚きのほうが大きかったです。国会の、福祉に関する理解を最もしているはずの厚生労働委員会で、障害があることで排除されたわけですから。まさか取り消されるなんて、という気持ちでした。

――代わりに出席した同協会の金澤公明常務理事は、「看過できない障害者差別がある」という岡部さんのメッセージを紹介した。

 あの日は傍聴席にいました。自宅から国会までは介護タクシーなら30分ほど、地下鉄なら1時間ほどです。メッセージが読み上げられると議場がざわついたので、私の気持ちが届いたのかなと感じました。

――岡部さんがALSを発症したのは48歳。重度訪問介護の給付が確保できなければ、自発呼吸が難しくなっても、人工呼吸器をつけないつもりだったという。

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