ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌新連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、ミランダ・カーさんを取り上げる。
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住む世界が違うとはよく言ったもので、私の住む世界ではまず登場しない人物が、違う世界では大変なアイドルだったりします。もちろんその逆もしかり。
突然ではありますが、私はミランダ・カーを知りません。正確に言うと、知ってはいるけど、ほとんど“知らない”に等しいぐらい知りません。彼女が何を生業にしていて、どのくらいの名声があって、どこら界隈で重宝されているのか。歌手? 女優? 誰かの奥さん? 平子理沙? いずれにせよ、私にとって何の有り難みもない人であることには間違いなさそうです。
そもそもミランダ・カーを目にしたところで“ミランダ・カー”という名前すら出てこない私が知っている“ミランダ・カーの情報”といえば、たぶんアメリカ人で、たぶん20代で、サマンサタバサのイメージキャラクターをしているけど、ボールド(洗剤)のCMのおねえちゃんとは別人で、EXILEのTAKAHIROより背が高いということぐらいです。むしろこれだけ知っていれば、もう充分なんじゃ……。
しかしながら、そんな暮らしの中でも、ミランダ・カーは結構な頻度で私の視界に入ってきます。
なんでも相当な人気者だそうですし、空港だかどこかでファンが群れをなす様子も、テレビで見たことがあります。にも拘(かかわ)らず! 私の周辺で、ミランダ・カーの話をしている人がいないというのは、どうして?何か理由があって、みんな私の前ではミランダ・カーの名前を出さないように気を使っているとか? 勝手に“NG扱い”されているなんてことは、芸能界じゃよくある話ですが、私、ミランダ・カーを怒らせたりしましたっけ? 私が怒らせたのは、ミランダ・カーではなく、西田ひかるだったはず……。