「安直な紋切り型を批判してきたのが、蓮實重彦という批評家です。会見でも、自らの態度で、賞やその受け止め方を批評していたんだと思います」

 市川氏は続ける。

「賞はよいもの、受賞はうれしいというのも、紋切り型のひとつ。だからこそ受賞の事実だけに注目されては不機嫌にもなります」

 年齢に関しても、

「ご本人はよく『後期高齢者の蓮實です』とネタにするほどですから、それ自体は嫌ではないはず。ただ、年齢を大きく報じたがる安直さには決して付き合うまいと。内容の下品さに何かおっしゃいよ、と思っていたのではないでしょうか」

 10年に同賞を受賞した東浩紀氏はツイッター上で、

<彼のあの発言が、何十年も繰り返されてきた「芸風」であることも知らないわけで、すべてが茶番>

 と、発言。表層の言葉の連なりを忌む蓮實氏の思想に触れよ、ということか。

 6月の贈呈式では、蓮實氏はどんな表情を見せるのか。こういう見方がすでに、「はた迷惑な話」でしかないかもしれないが。(本誌・藤村かおり、太田サトル、上田耕司/今西憲之)

週刊朝日 2016年6月3日号