「世界全体でみると、二酸化炭素などの排出ガスの抑制と税制を組み合わせた環境規制を、欧米が強化している。大市場の中国までも追随します」
深尾氏によると、世界最大の自動車市場の米国では、カリフォルニア州を筆頭に、排ガスゼロの車の販売をメーカーに義務付ける「ZEV規制」を始めている。自動車メーカーに排ガスゼロ車を一定比率販売することを義務化する規制だ。
この動きが進むと、トヨタの「プリウス」などハイブリッド車よりも、電気自動車が優位とみられている。中国も同州に準じたZEV規制の導入を検討中。世界の自動車業界の流れが、今後大きく変わっていく可能性を秘めた規制だという。
排ガスゼロ認定の電気自動車の世界販売ランキングで、三菱自の「アウトランダーPHEV」は3位だ。日産の「リーフ」は2位。ルノー・日産と三菱自との技術を合わせると、環境規制の潮流に乗った世界最大の電気自動車メーカーになれるというわけだ。
環境対応以外に、三菱車の東南アジアでのシェアも、日産には魅力的だ。「アジアのデトロイト」と呼ばれるタイは、全メーカーの昨年の生産台数が計191万台。うち33万台が三菱車で、日系ではトヨタに次ぐ2位。日産の2.5倍近い規模になる。
三菱自の販売台数は9割が海外。国内ではブランド価値が大きく傷ついたが、同社の販売台数からすると、1割ほどに過ぎない。
国内販売は、この先どうなるのか。前出の日産社員はこんな見方を示す。
「3度も不正を起こしたブランドを買いたい人は、減る。三菱の主力の軽自動車『eKワゴン』よりも、日産の『デイズ』のほうが圧倒しています。三菱自身も日本の優先順位は高くないはずです。(ゴーン)社長も総論として三菱ブランドを残すと言うだけで、日本がどうこうとは言ってはいない。海外市場でスリーダイヤを残し、国内ではなくなる可能性もありますね」
※週刊朝日 2016年5月27日号より抜粋