「小綺麗でしっかりしたお母さんでした。以前、マンション裏の駐車場の排ガスが気になると相談に来たことがありましたが、結局『自分で交番に行ってきます』と。行動派でした」
私立高校に通う長女は、毎朝7時前には家を出た。
「挨拶しても小走りで去っていく。小柄で物静かな雰囲気でした」(同管理人)
父親は不在がちで、母娘の時間が長かったようだ。東北福祉大学の半澤利一准教授(犯罪心理学)は、こうした閉鎖的な関係が犯行の要因となる可能性があると見る。
「母性が暴走し、子どもへの過剰な期待や過干渉となることも。一方的な圧力を受けた子どもは、親への敵意を抱くこともあります」
立命館大学の廣井亮一教授(同)はこう指摘する。
「通常、子どもたちは親の期待に沿う“良い子”でいながらも、いたずらや反抗などを繰り返しながら、徐々に巣立っていく。この悪を極端に押しつぶす親の行為が子どもの善悪のバランスを崩し、凶悪事件を生む可能性があります」
事件後、捜査で家財道具一式が押収され、「洗濯ができないから」と、父親は近くの実家に洗濯物を運んでいたという。逮捕までの約2カ月間、何もない部屋で過ごした父と娘。暮らしぶりは静かだった。だが住民の気持ちは休まらない。長女は否認を続けている。
「もしほかに犯人がいるのだとしたら……。怖くてたまりません」
※週刊朝日 2016年5月27日号