ライヴ・アット・プラグド・ニッケル1969
ライヴ・アット・プラグド・ニッケル1969
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失われていなかったロスト・クインテットの69年シカゴ・ライヴ
Live At Plugged Nickel 1969 (So What)

 出ました、久々のソー・ホワット盤。今回は1969年6月の「プラグド・ニッケル」ライヴ。「プラグド・ニッケル」といえば、あの日本盤は不完全、アメリカ盤は完全ということで物議をかもしたボックス・セットが有名ですが、じつはそれほど音源は残されていない。各国マイルス者の間では、ボックス・セットに収められた65年12月そして今回登場した69年6月以外、その存在は確認されていないようです。

 さて問題は録音日。これがいまだに不詳。ちなみにマイルスのクインテット(通称ロスト・クインテット)が「プラグド・ニッケル」に出演したのは、6月4日から14日にかけての2週間。曜日でいうと、水曜から土曜ということになる。ただし9日(月曜)と10日(火曜)は休みだったらしく、そうなると12日間の出演。さらに毎回3ステージとすると、それはそれはとんでもない演奏時間と音源量になる。

 ともあれ曜日は特定不能ながら、このときのライヴ音源はまだまだ眠っているはず、最終的には全ステージを発掘していただきたいと思う。ちなみにこのときの「プラグド・ニッケル」は公式にライヴ・レコーディングされていない。参考までに、以下はアメリカのジャズ専門誌ダウンビート(69年8月7日号)に掲載されたライヴ・リポート(筆者はラリー・カート)のエンディングだが、どうやら関係者はこのリポートを無視したようではある。

「マイルス・デイヴィス・クインテットはこの顔触れになって、音楽史にほとんど類をみない一定の実りの域にまでジャズのある側面を推し進めていった。さあこうなると、マイルスとコロンビア・レコードがこのラインナップのライヴ盤制作を決断することを祈ろう」

 次に肝心の音質やバランスはどうか。これは69年時点のクラブにおけるオーディエンス録音という状況を加味する必要があるが、かなり良好かつ優秀なクオリティと判断できる。もちろん、欲をいえばきりがないが、同時期の「ジャズ・ワークショップ」のライヴあたりと比較しても相当にレヴェルは高い。やや甘いかもしれないが、そのようなわけで「ほぼ満点」といっていいのではないだろうか。

 演奏がこれまたすごい。65年の「プラグド・ニッケル」もケンカそのものだが、69年の今回は、さらにヒートアップしている。65年ではマイルスは仲裁役を買って出ていたが、69年では率先してケンカの売買に参加している。この差は大きい。ともあれ、またしても名盤が生まれたとの思いを強くする。

【収録曲一覧】
1 Gingerbread Boy
2 Masqualero
3 Agitation
4 Milestones (incomplete)
(1 cd)

Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ss, ts)
Chick Corea (elp)
Dave Holland (b, elb)
Jack DeJohnette (ds)

1969/6/4-14 (Chicago)

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