民主党と維新の党が合流し、野党第1党となる民進党が設立された。自民党への対抗馬となるべき存在だが、本誌で「そこが聞きたい! 田原総一朗のギロン堂」を連載する田原総一朗氏はその中途半端な綱領に辟易しているという。

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 3月27日に、民主と維新の両党が合流した民進党が結党大会を開いた。衆参両院で計156人が結集した野党第1党ができたわけだ。だが、前々回で記したように、民進党に対する各新聞の世論調査の結果は、総じて芳しくない。

 たとえば朝日新聞は、民進党に「期待しない」が57%、「期待する」は31%。日経新聞は、「期待しない」が66%、「期待する」は26%。共同通信の調査では「期待しない」が67.8%、「期待する」が26.1%となっている。

 民主党は安倍晋三政権になって以後、安保関連法にもアベノミクスにも批判は行っていたが、対案らしきものは示せていなかった。そして維新の党は大阪勢と分裂して、合流した議員は元民主党だった顔ぶれが多く、鮮度がないのだ。

 だが、せっかく合流したのだから、何とかして自民党に危機感を与える存在になってほしいと、少なからぬ国民が願っているはずである。

 民進党は安保関連法については共産党や社民党と同様に廃案を主張し、対案を示している。たとえば尖閣諸島に中国の漁民の格好をした人間たちが武器を持って上陸した場合、これはいわゆるグレーゾーンで、自民党も明確な対策を打ち出せていない。この場合に、自衛隊が対応できるようにすべきだというのである。地球の裏側まで範囲を広げた重要影響事態法には反対だが、周辺事態法の延長として日本の近辺で戦争が起きた場合には後方支援は行う、としている。

 
 だが、国民の多くが関心を持っているのは経済政策である。アベノミクスは、はっきり言って行き詰まり感が強まっている。日銀は、1月29日の金融政策決定会合で、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を発表したが、現在のところ成果らしきものはあらわれていない。

 民主党の論客を自任する議員たちは、「アベノミクスがなまじ経済成長をうたったために格差が広がったのだ」と批判し、「成長などではなく、分配の公平をうたうべきだ」と主張していた。ところが、民進党の綱領なるものを見ると、「要旨」4番目の項目で「経済成長の実現」をうたっているのだ。

 これはどういうことなのか。何人もの議員に問うた。どの議員もが「経済成長をうたわないと、民進党が左傾していると国民に思われるという意見が特に執行部に強く、中途半端になってしまった」と、自嘲するように答えた。実は、これこそが政権の座にいたときからの、民主党の最大の欠陥だったのである。意見がまとまらなくて中途半端になってしまう。だからこそ政権の座から落ちてしまったのである。

「だが、岡田克也代表が何とか覚悟を示しました。『参院選で敗れたら、代表を退く』と」

 議員の一人が言った。確かに、岡田代表は覚悟を示すように言った。だが、「敗れる」とは具体的に何議席以下のことなのか。

 今回の参院選挙で、民主党の改選議席数は42議席である。しかし、これは菅直人内閣、つまり民主党政権時代に獲得した議席数で、その後、野党に落ちた3年前の獲得議席は17でしかない。

「敗れる」とは、何議席以下なのか。何人もの民進党の議員に問うたが、誰もが口ごもるばかりであった。民進党よ、失うものはないはずだ。死にものぐるいで戦うべきである。

週刊朝日 2016年4月15日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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