油田さんは学力も申し分なかった。塾などの助けもなく、センター試験の得点率は9割超。教育学部の基準点である8割を楽々クリアし、見事合格を勝ち取った。
だが、全般に介助が必要で車椅子の生活。4月からの一人暮らしに家族は不安はないのだろうか。母親のあゆみさんは胸中を明かす。
「もちろん心配はあります。最初は、自宅通学の大学にすればいいのにとも思いました。でも、優衣の思いは強かった。将来は経済的にも自立してほしいので、応援しようと思っています」
とはいえ、住まい探しは予想以上に大変だったという。設備がないなどを理由に、不動産業者に断られることも多かった。
そんなとき支援してくれたのが、障害学生支援ルームだった。担当者は話す。
「過去にも上肢や下肢に重い障害がある学生さんが学んでいたので、学内のバリアフリーは進んでいます。ただ、油田さんのような一人暮らしは初のケースです」
今後、不便があれば、随時改修工事をして対応していく方針という。油田さんは現在、ケースワーカーに相談しながら学内介助について京都市と交渉中だ。
「重度の障害者である私自身がサンプルとなり、一人暮らしを検証したい。ロールモデルになれればうれしいですね」
将来の目標は?
「障害者の心をサポートできる仕事をしたい。福祉制度など社会の仕組みも変えていきたい。だれもが、やりたいことを諦めなくていい世の中にしたいです」
合格後、祖父母、母、弟と旅行を楽しみ、石垣島で人生初のシュノーケリングにも挑戦した。
「前例がない」ことに立ち向かい、切り拓いてきた油田さん。これからも自らが「前例」となって道を作っていくのだろう。
※週刊朝日 2016年3月25日号
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