もし本当に「トー娘」が走ってくるなら、私はバレンシアオレンジのいっぱい入った紙袋を胸に抱えて彼女を迎えよう。
「トー娘」と「オレンジおじさん(以下、オレおじ)」が鉢合わせで衝突。転がったオレンジを慌てて拾う二人。
そこに通りかかったお巡りさんの自転車が、ガラガッシャンと派手に転ぶだろう。
ゴミ捨て場に突っ込んだお巡りさんが起き上がると、頭の上には魚の骨がのっているはず。
オレンジを拾う手と手が触れて、二人がドキッとしている横でお巡りさんが、
「コラコラ! 気をつけたまえ! ほ、本官の話を聞いておるのかっ!(怒)」
と、アタマから湯気を出すにちがいない。
教室でも「トー娘」は「オレおじ」のことが気になって授業もうわの空。
「次! 58ページを読んで!」
と先生にさされるが、まるで見当違いのところを読み始め、
「……おいおい! 起きてて寝ぼけてると承知せんぞっ!!」
と大目玉。クラスメートは大爆笑。
帰宅後、勉強机に頬杖をつきながら、今朝「オレおじ」から別れ際に手渡されたオレンジ一つをじっと見つめる「トー娘」。
「そういえば、今日から家庭教師が来るんだった……あんまり気が乗らないなぁ」
「先生がおみえになったわよー」
と母の声がして、扉を開けて迎えれば、
「今日からよろし……あ! 君はトーストの!?」
「……え!! オ、オレンジのおじさんっ!?」
せっかくの休日に、こんなこと考えながら半日も過ぎていると絶望的な気持ちになりますね。
ただ全国の女子のみなさんにひとつ言いたいのは「『オレンジの袋を抱えた男子予備軍』はここにいるよ!」ということ。いつでもオレンジ抱えて立ってるから、トーストくわえてぶつかってこい!!
※週刊朝日 2016年3月4日号