記者は今回、アートネイチャーの既製品とオーダーメイドウィッグを体験させてもらうことにした。最初に向かったのは表参道にある既製品ブランドを扱うジュリア・オージェ表参道店。そもそもこうした女性カツラを取り扱う店では、カツラということばは使わない。業界では「ウィッグ」と呼ぶ。明確な定義はなく、「イメージの問題」らしい。以下、ウィッグで統一する。
白髪が気になる筆者はまず、幅4センチ×長さ12センチ程度の自毛を出せる部分ウィッグを着けてみた。既製品ゆえ色味が合わないかなと思ったが問題なし。そもそもロングヘアに部分ウィッグで合うのか半信半疑だったが、パチンパチンと留めて自毛とともにとかすとレイヤーが入ったように見えるだけで着け心地も違和感がない。しかも、頭頂部にちょっと載せただけで白髪が消えただけではなく、艶のせいか若返って見えるではないか!
フルウィッグもいくつか試着。最初に選んだのは、モデルの黒田知永子さん風のショートカット。しかし、毛色が黒かったせいかミスマッチ。髪色選びは重要だと実感。次にもう少し長さのあるウィッグを被った。今度は茶系で色味に問題はなし。ただ、周りから違和感がないと言われても、自分としては見慣れず年齢相応になるような気が……。「みなさん見慣れるのに3分かかります」
と、店長の茂野千里さん。今度は肩程度の長さのボブも試してみる。「このままでなく、もう少し輪郭に合わせて菱形シルエットにカットすると目力もアップしていいですよ」と毛をちょっと持ち上げてくれた。こんなショートボブならいいかも。既製品でもカットしたり巻いたり本人に合わせてスタイルを作ってくれる。
既製品は人毛と、ナイロンやアクリルなどの人工毛を使っているが、手触りはかなりリアル。カラーも4色くらいはそろう。ウィッグの間から自毛を引き出して生かすタイプはさらに自然だ。聞くより見るより着けて初めて威力を実感する。「今どきのウィッグはここまできているのか」と驚く。
次に同社銀座のサロンへ向かう。オーダーメイドはさらにリアル。個人仕様ゆえ最初は念入りなカウンセリングから始まる。
「希望や髪質、スタイリング、生活パターンも伺っていちばん楽でその方らしくいられるような状態にするにはどうすればいいか。体の一部になるようなイメージを納得いただきます」
と、毛髪診断士でもある同社営業企画部次長の矢島和子さん。
その後はわずか数秒でスキャンできる3D機器を使った採寸だ。サイズほか毛の質感、毛流れ、水分量などを細部まで分析したデータを瞬時に海外工場へ送る。地肌となるベースから手づくりし、熟練した職人が1本1本植毛。完成まで1カ月以上かかって世界に一つのウィッグができあがる。さらに、それを調整し初めて着けて帰れるそうだ。ベース部分も既製品で十分だと思っていたが、オーダーは満員電車の距離で見られてもウィッグとはわからないほど自然だった。
※週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋