「まず『有事の金』とは、平時に買い、株や債券の暴落時に『金を売り、しのぐ』という意味なんです」
例えば1997年のアジア通貨危機の話。韓国は輸入で支払うドルが不足し、国民に金の拠出を呼びかけた。すると金200トンが集まり、ドルを調達できたという。国境の危険が身近な大陸系国民の「平時買い」を証明した好例だ。
中国やインドも同様だ。WGCによると、金の世界生産は9月までの1年間で約3193トン。うち約55%を両国の民間が買った。中国人民銀行も01年から買い増しているようだ。
一方でプラチナは、車の排ガス触媒にも使用する貴金属。あの独自動車メーカーと「運命共同体」のため、需要の減少でいまや金価格を下回ってしまった。
今後はどうか。豊島氏は「金は20年に7千円」と大胆予想。というのも、根強い需要があるが、「容易に採掘できる場所が採り尽くされた」からだ。プラチナも「過去にも金価格を下回ったが、1年~1年半で元に戻った」とし、20年には8千円を超えるとみる。
「金は騰落しつつ右肩上がり。でも利子はつかず、あくまで投資の脇役です。ただ普段は役に立たなくても危機時こそ味を出す脇役。身の丈に合わせてコツコツ買うのがポイントです。今はそれを始めるチャンス」
今こそ平時の金か。
※週刊朝日 2015年12月18日号