追悼の花束を手向けるパリの市民 (c)朝日新聞社
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<十字軍を支援するという安倍晋三の浅はかな誓いによって、(中略)すべての日本市民とその利益が今、世界各地にいるイスラム帝国の戦士と支援者のターゲットとなっている>

 パリのテロ事件を受け、11月18日にネット上に公開された過激派組織「イスラム国」(IS)の英字機関誌「ダビク(DABIQ)」。今年2月にも書かれた、すべての日本人への“テロ宣言”が再び掲載された。

 ISが16日に公開した動画では、「米国の首都ワシントンを攻撃する」と表明。脅しに屈してはテロリストの思うつぼとはいえ、年末年始に海外旅行を計画している人は、自分の身を自分で守るために情報収集が必要なのも事実だ。何を基準に海外でのテロ遭遇リスクを考えればいいのか。

 欧州からISに参加した若者がシリアやイラクで訓練を受けて帰国し、本国でテロを起こす危険性は以前から指摘されている。それに加え、約60カ国が参加する「有志連合」のうち、実際にISへの空爆や作戦の後方支援という「戦闘行為」に参加しているイギリスやオランダ、ベルギーなどは報復テロを警戒する必要がありそうだ。ちなみに、日本も有志連合に名を連ねているが、いまのところ人道支援のみにとどまっている。

 だが、これだけでは見えてこないポイントもある。日本エネルギー経済研究所・中東研究センター研究理事の保坂修司氏は、欧州各国のイスラム教徒が置かれている状況に注目すべきだという。

「フランスはイスラム教徒の人口が多いだけでなく、公立学校でのヒジャーブ(スカーフ)の着用を制限するなどの世俗主義が、イスラム教徒の怒りにつながってしまっている。根底には経済格差や社会的地位の低さへの不満の鬱積があります。“貧すれば鈍す”で、他にすがるものがないから、若者が過激思想に染まってしまうのです」

 シリア難民の受け入れを表明する欧州だが、イスラム教徒の立場はどの国でも決して良好ではない。元からイスラム教徒が多いアジアやアフリカ諸国と比べれば、欧州ではマイノリティーとして追い詰められやすい傾向があるのだ。各国のIS戦闘員の数が、そうした不満の度合いを暗示している可能性はありそうだ。

 また、ネットを通じたISの宣伝戦略を分析することもヒントになる。

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