佐藤:あれで大きく変わりましたよ。

泉谷:放射能が漏れちゃったんだから、そんなこと言ってらんないと。これまでさんざん原発に世話になってきていて、今さら手のひらを返したように「反原発」とは言いにくい。「脱原発」ではあるけどな。やっぱり音楽が社会の役に立つことをしなくちゃ。自堕落なロックスターなんて、もう流行(はや)んない。今さらドラッグやられても、それどうなのよって(笑)。

佐藤:そう。そんなことに新鮮味はないから。

泉谷:だからタイジのやったことの意味は大きいんだって。

佐藤:地元に応援してもらっているという感触がすごくある。長く続けるためにも、もっと地元と密着していきたい。小学生たちにソーラー蓄電池でギターを鳴らしてみせるワークショップもやりましたけど。

――駐車場が不足するほど、観客も増えました。

泉谷:環境を考えたフェスなんだから、歩いてこいっての。そりゃ都会と比べれば何かと不便だよ。遠いし。でも、苦労するからこそ、思い出も残るんだよ。

佐藤:電池だから、いつなくなるかわからない。公演に耐える量を用意してはいるけれど、限界はある。

泉谷:だからこそ、電気を通す意味とか、音のありがたみがわかる。仮に途中で切れたとしても、それはそれでかっこいいよね。

佐藤:そうそう。そんなときは「すいません、電池替えます」って言えばいい。実際、別のライブでは公演の途中で電池を差し替えたけど、お客さんはむしろ「イエーイ!」って喜んでた。

泉谷:ロックには様式美があって、ギターがなきゃダメだし、しかもエレキじゃないとダメなのよ。アコースティックギターと違って柔らかい弦と電気に頼ってさ。猛練習してるくせに、それを隠してイイカゲンなスタイルに見せて「俺って不良だろ」って装うのが、ロックの文化なわけ。

佐藤:僕はエレキから始めたけど、確かにアコギの弦はめっちゃ硬い。

泉谷:で、ロックはアンプなくちゃダメだし、ライトなくちゃダメだし、ジーパンなくちゃダメだし。

佐藤:ジーパンは電気と関係ないでしょ(笑)。ちなみに「中津川」での照明には、LED(発光ダイオード)を使っています。

泉谷:なんでロックミュージシャンがエネルギー問題に絡んでいくのかって言えば、そりゃあ、長生きしたからしょうがねえんだよ。ロッカーなんて、どうしようもなく自堕落なんだから、さっさと死ねっての。長生きしちゃったんなら、世の中に罪滅ぼししないといけない。世のため、人のため、エネルギーのため、何かやらないとな。

週刊朝日 2015年10月30日号より抜粋

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