M&Aに力を入れているのはALSOKだ。昨年、介護サービス会社を買収し、主力のセキュリティー事業だけでなく、新たに介護事業の拡大にも力を入れている。業績も好調そのもので、6期連続増収、7期連続増益、3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。17年度までの中期経営計画でROEは10%程度、配当性向で3割を目標に掲げている。
コーセーやピジョン、エイチ・アイ・エスなどは高成長を続けているだけでなく、インバウンドというテーマ性もあわせ持っている。
そして、河合氏が「高い経営手腕を発揮している」と評価しているのが、円高を追い風に“円高時代の勝ち組”と呼ばれたニトリホールディングスやエービーシー・マートだ。
「この2年ほどで、本来なら逆風となる円安が50%ほど進んだにもかかわらず、両社ともに過去最高益を更新しています。それは外部環境の変化に対応した経営者の手腕によるところが大きい」
また、岡三証券・シニアストラテジストの石黒英之氏も、IoT(モノのインターネット)など、市場として今後爆発的に拡大することが確実視されている電子部品などに注目しているという。
「今、150億台のデバイスがネットにつながっていると言われていますが、20年には500億台まで増えると見られています。すでに時計や眼鏡などの日常アイテムがネットにつながりつつありますが、今後は自動車や自動販売機、工場設置機器、医療機器などもネットにつながる時代が到来するのです」
この流れの恩恵を受けるのは、自動車や家電向けのモーターを製造する日本電産、世界トップのセラミックコンデンサーを持つ村田製作所などと石黒氏は見ている。
「また、ロボット業界や介護業界も市場の拡大が見込まれています」(石黒氏)
ROEはあくまでも経営の達成具合を見る際や投資判断の一つの目安でしかない。しかし、自社株買いや増配、M&A、設備投資などでROEを高めようと企業の意識が変わり、ROEは着実に株式市場に根付きつつある。約100兆円あると言われている上場企業の手元流動性資金。この巨大な“山”が今、動き始めた。
※1 自己資本利益率と呼ばれ、企業の自己資本に対してどれくらいのリターン(純利益)を生み出したかを見るもの。
※週刊朝日 2015年10月30日号より抜粋