梶田隆章・東大宇宙線研究所長(56)がノーベル賞・物理学賞を受賞した。世界でも有数の研究者である梶田氏だが、周囲に聞くと意外な一面があった。
「梶田先生って、いまだにガラケー使ってるんですよ」
東京大学宇宙線研究所の梶田隆章研究室の男子院生(26)は、そう言って笑った。学生たちによれば、流行を追いかけるタイプじゃない。だから、梶田さんがガラパゴスなケータイの画面をパカッと開いても違和感がなく、誰もツッコミを入れたことはないという。
岐阜県にある観測装置「スーパーカミオカンデ」で素粒子ニュートリノを観測し、ニュートリノに重さ(質量)があることを証明。物質や宇宙の謎に迫る功績が評価された。
世界的な宇宙線物理学者がITに疎いとは思えない。埼玉県在住の母朋子さん(81)に聞いてみると、「わりと機械に弱い子なんです。電気製品に興味がないのか、操作を勉強する暇がないのか」と声を立てて笑った。
梶田さんは今、後進の育成に熱心だ。先の院生は、ふだんの梶田さんについてこう話す。
「常にニコニコしていて温厚。僕らの研究がうまくいくと『お、素晴らしい!』と褒めてくれる。もう一回そう言われたくて、日々研究に取り組んでいます」
あるとき、梶田さんと同じ電車に乗り合わせ、世間話をしたのを覚えている。
「所長なのに、研究所に学生が全部で何人いるか知らなかったんです。自分の研究室に3人いることくらいしか知らないって。『そんなんでいいんですか』と聞いたら、『50過ぎると何も覚えられないんだよ』と笑っていました」
博士課程で学ぶ男性(25)は、こう話す。