クルーズパーティーのデッキからみた夕暮れの自由の女神は美しかった(写真/筆者提供)
クルーズパーティーのデッキからみた夕暮れの自由の女神は美しかった(写真/筆者提供)
この記事の写真をすべて見る

 ドキュメンタリー映画監督の海南(かな)友子さんが10歳の息子と年上の夫を連れ、昨年1月からニューヨークで留学生活を送っている。日本との違いに戸惑いながら、50歳になっても挑戦し続ける日々を海南さんが報告する。

【写真】コロンビア大学のWEAI究所のセメスター終了セレモニーは心温まるものだった

*  *  *

 アメリカの大学生は猛烈に勉強する。日本の大学生とは比べ物にならない。で、セメスター(学期)の終わりには、頑張ったことをたたえてパーティーが開かれる。50歳の子連れ留学の私にも楽しい案内が来た。それはマンハッタン島をまわるセメスター終了のクルーズパーティー。その甘美なお誘いに、我が家はおめかしして家族で出掛けてみた。

 夕暮れの港には、何百人もの若者たちが長蛇の列。出港の汽笛が鳴るとゆっくりと船はマンハッタン島の周囲を回り始めた。いい席を確保すべく船内に飛び込んだ私の目に入ったのは、安いピザやハンバーガーの屋台。あれ? 結構オシャレしてきたのにこれだけ? と拍子抜けしてしまった。とりあえずピザとホットドッグとコーラを買ったが、近所のフードコートレベルだ。

 もし、これがフランスだったらオードブルが出そうだなあとか、日本ならおすしかなあと妄想。デッキの若者たちは楽しそうに踊っていたけど、うちの家族はホットドッグを食べながら、夕暮れの自由の女神を拝んで、私のセメスターパーティーは終わった。

 アメリカ料理には期待していなかったが、クルーズパーティーで味わったような残念感には何度も出合った。どんなに高級なアメリカ料理店に行っても、ハンバーガーかサンドイッチが王道なのだ。アメリカの食文化の名誉のために言うと、ハンバーガーもサンドイッチも日本よりも格段においしい。だけど、味には限界がある。すしもたくさん売っているが、米がぼろぼろパサパサで、さらに大半がスパイシーツナロールだ。マグロの巻物にピリ辛ソースが大量にかかっている。これをすしと言われるとあまりに悲しい。

 アメリカ料理のバリエーションが乏しいから、たとえばマンハッタンの「一蘭」のラーメンが20ドル(約2600円)しても30ドル(約4千円)しても、並んで食べるのだろう。だっておいしいものが食べたいもん。

次のページ
コロンビア大学の味