羽生:そうです。というのも、タイトル戦が七つになったのがつい最近でして、大山先生がいらした時代は三つしかなかったんです。私はトーナメントが増えた時期にプロになったので、恵まれてましたね。

林:1億円を超して、美しい女優さんとご結婚されたことで、棋士志願の人を増やしたかもしれませんよね。ご自身もカッコいいし。

羽生:そんなことないんですが、テレビの影響ってすごく大きいなと思ったのは、以前、将棋漫画で『月下の棋士』というのがあったんです。

林:はい、知ってます。

羽生:主人公がいつも帽子をかぶっていて、その漫画がテレビドラマになって放送されている間は帽子をかぶってくる子どもがえらく多くて、放送が終わったらいなくなっちゃったんです(笑)。

林:かわいいですね。将棋を指す子って集中力があって、勉強もスポーツもうまくいきそう。昔は根性論や精神論を説く方がいらしたけれど……。

羽生:ただ、根性や根気は大事ですね。長い対局だと、朝の10時に始まって、終わるのが夜の12時とか1時なので、ヘトヘトの状態で頑張れるかが問われるんです。私も対局相手に最長4時間考えられたことがあって……。

林:4時間!

羽生:将棋の対局室ってシーンとしてるので、日常よりもさらに時間が長く感じるんですね。私もそれくらい考えたことがあるんですが、相手がやると長いですね。将棋のことを考えていたのは最初の1時間くらいで、あとは「4時間あったら、日本中どこでも行けるな」とか考えてました(笑)。将棋というより、ほとんど体力の勝負ですよね。

週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋

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